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緊張高まるロシアの飛び地

石川 一洋  解説委員

バルト海に面したロシアの飛び地カリーニングラードでロシアと欧米の緊張が高まっています。

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Q プーチン大統領怒っていますね?

A カリーニングラードは、ポーランドとリトアニアに挟まれロシア本国からは離れた飛び地です。ロシアからカリーニングラードへの貨物列車を指揮するプーチン大統領、リトアニアで通行禁止と言われ、「リトアニアがEU加盟したとき、ロシアからの貨物は制限なしに通すと約束したではないか」と怒り心頭で、対抗措置を取るとしています。
しかしリトアニア側はロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対するEUの経済制裁に従っているだけだ、建設資材などの領内通行は許さぬと一歩も引かぬ構えです。

Q そもそもなんでこんな飛び地ができたのですか?

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A 第二次世界大戦に伴うヨーロッパの領土変更の結果です。もともとケーニヒスベルクと呼ばれてドイツ人の植民によってできた町で、「純粋理性批判」などで知られる大哲学者カントも生涯ここで暮らし、ドイツの歴史と深く結びついています。第二次大戦前はドイツの飛び地で、ナチスドイツが1939年第二次大戦のきっかけとなったポーランドへの侵攻を始めたのも、この飛び地の安全を確保するというのも理由の一つでした。

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第二次大戦後、ソビエトはこの土地をソビエト領としてソビエトの中のロシアの一部とし、その後ソビエト連邦崩壊した結果、今度はロシアの飛び地となったのです。

Q プーチン大統領がどんな対抗措置を取るのでしょうか?

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A ロシアはリトアニアへの電力供給を停止するなど経済的な措置のほかに、核兵器搭載可能な中距離ミサイルを新たに配備する可能性もあります。ロシアから見るとカリーニングラードはNATOに周囲を取り囲まれています。一方NATO・EUからみますと、バルト艦隊などロシアの一大軍事拠点の飛び地は脅威と見えます。ロシアとNATOの発火点となる危険が高まっています。
ただロシアもNATOも直接の軍事衝突は避けたいのが本音で、物資の輸送問題の解決策を探る動きもあります。是非「理性」で解決してほしいところです。

(石川 一洋 解説委員)

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