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"不法入国者はアフリカへ" 英国に批判殺到

二村 伸  解説委員

イギリス政府は不法移民や難民をアフリカに強制的に移送する方針です。国内外から強い批判の声が上がる中、先月半ば不法入国者の送還を試みましたが、出発直前にとりやめとなりました。背景に何があるのでしょうか。

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Q.不法移民や難民の移送計画とは?

ことし1月以降、ボートやトラックでイギリスに密入国し難民認定を求めている男性を出身国にかかわらずアフリカのルワンダに送り、そこで申請手続きをしてもらうというもので、1億2000万ポンド、およそ200億円の資金援助の見返りとして5年間ルワンダ政府が受け入れることになっています。
難民支援団体は非人道的だとして計画の中止を求める訴えを起こし、イギリスの裁判所は公共の利益を理由に訴えを退けましたが、イギリスも加盟するヨーロッパ人権裁判所が第1陣の移送当日に差し止め命令を出しました。ただ、それでもイギリス政府は計画を続ける方針です。

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Q.なぜそこまで強硬なのですか?

イギリスにとって移民の流入はEU離脱の要因の1つともなった重大な社会問題です。
英仏海峡をわたって密入国した人は、ことしすでに1万人をこえ、不法入国を阻止することがイギリスの優先課題です。そこでイギリス政府は、ヨーロッパ人権裁判所の判断には拘束されずイギリスの最高裁が最終的な権限を持つとする新たな法案を議会に提出しました。さらに30日にはルワンダと同じような協定をナイジェリアと結んだと発表しました。

Q.強行すればさらに反対の声が強まりそうですね。

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「彼らには新しい人生が待っている」、この措置で「不法入国者が減る」とイギリス政府は主張していますが、160以上の市民団体や宗教関係者から批判の声が上がり、野党は「国家が支援する人身売買だ」などと反発しています。国連のグランディ難民高等弁務官も「何もかも間違っており、壊滅的な前例を作るおそれがある」と批判的です。強制的な移送計画により果たして不法入国者が減るのか、また人権は守られるのか、厳しい目が注がれています。

(二村 伸 解説委員)

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