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核兵器禁止条約 ロシアからの黒雲

石川 一洋  解説委員

核大国ロシアによるウクライナ軍事侵攻の中、核兵器禁止条約の初めての締約国会議がオーストリアのウィーンで始まります。石川一洋解説委員に聞きます。

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Q ロシアから黒雲が立ち込めていますね

A はい。ウクライナに軍事侵攻したプーチン大統領は、「核戦力は即応体制にある」と述べて、ウクライナを軍事支援する欧米をいわば“核による威嚇で牽制しています。核大国ロシアがヨーロッパの中心で戦争を起こすという前例のない事態が起きています。一方の核大国アメリカは早期警戒機や宇宙からの情報をウクライナに提供し、ウクライナを軍事面で全面支援しています。ロシアの軍事侵攻は米ロの対立を深め、核使用の危険性をこれまでになく高めていると言えるでしょう。

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Q この黒雲は、初めての締約国会議にどのような影響をもたらすでしょうか

A ロシアの脅威を抑止するには核兵器による抑止力しかない、抑止力が必要だという意見がNATO加盟国や日本のようにアメリカの核の傘の下にある国の中では強まっています。しかし核抑止を強化すべきだという意見に対しては、核兵器禁止条約を進めてきたNGOや被爆者からは、強く反発する声も上がっています。

Q どのような声でしょうか

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A 「核兵器国による侵略行為こそ核兵器の危険性を示している。ウクライナでの戦争は核抑止が破綻していることを証明している」としています。被爆者は、核兵器の非人道性を世界が認識し、一刻も早く廃絶することが必要だと強調しています。そしてドイツやオーストラリアなどアメリカの同盟国もオブザーバー参加を決めました。黒雲のような核戦争の脅威を感じているからです。今年1月米ロなど核保有国五カ国は、核兵器は必要だとしながらも、「核戦争に勝利はない。核戦争を戦ってはならない」との原則を遵守するとの共同声明を出しました。核兵器禁止条約を無視できないからです。
今回の締約国会議では核兵器禁止条約に基づく組織を作り、核兵器の廃絶に向けて具体的に道筋を示して、国際政治の実質的な力となることが求められています。

(石川 一洋 解説委員)

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