IAEA・国際原子力機関は、先週開かれた理事会で、イランを非難する決議を採択しました。再生に向けた協議が行われている「イラン核合意」への影響が心配されています。出川解説委員です。
Q1:
イランを非難する決議というのは、どういうことですか。
A1:
IAEAは、「核の番人」とも呼ばれる国連の機関で、各国の核開発を監視しています。イランが核合意を守っているかどうか、核施設への査察で調べてきました。今回の決議は、イランがIAEAに申告していなかった複数の施設で、核物質が検出されたことについて、イランが十分な説明責任を果たしていないと非難する内容です。
IAEAの報告書を受けて、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの4か国が決議案を準備し、8日の理事会では、ロシアと中国が反対したものの、賛成30、反対2の圧倒的多数で採択されました。
Q2:
イラン側はどう受け止めていますか。
A2:
強く反発しています。
IAEAへのいっそうの協力を迫る決議に対し、イランは、「IAEAには、誠実に協力してきた」と反論しています。そして、対抗措置として、IAEAがウラン濃縮活動をモニターするため設置した複数の監視カメラのうち、27台について、撤去する作業を進めています。
Q3:
今後、どんな影響が考えられますか。
A3:
崩壊の危機にある核合意を建て直すためのイランとアメリカとの間接協議への影響が心配されます。
協議は、去年4月から、EU・ヨーロッパ連合の仲介で、断続的に続けられてきましたが、3月半ばから中断しています。解決の難しい対立点が残っているうえ、ウクライナ情勢も影響しています。今回の非難決議によって、協議再開へのハードルが上がることは避けられません。IAEAのグロッシ事務局長は、「監視カメラが撤去されれば、イランでの査察に重大な支障が出る。その結果、核合意が崩壊するおそれもある」と強い懸念を示しています。
イランとIAEAの対立を解消することは、核合意を再生させるためには不可欠であり、すべての当事者による最大限の外交努力が求められます。
(出川 展恒 解説委員)
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