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イスラエル・UAE 自由貿易協定の背景

出川 展恒  解説委員

イスラエルとUAE・アラブ首長国連邦が、先週(31日)、自由貿易協定を結び、世界を驚かせています。出川解説委員です。

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Q1:
この自由貿易協定が注目されるのはなぜですか。

A1:
イスラエルは、1948年の建国後、アラブ諸国との間で、戦争と対立を続けてきましたが、おととし9月、アメリカのトランプ前大統領の仲介により、UAEとの間で国交を正常化しました。それから2年足らずで、イスラエルにとって、アラブの国とは初めての自由貿易協定が実現したからです。

Q2:
具体的にどんな内容ですか。

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A2:
貿易品目の96%を対象に、関税を撤廃、または、大幅に引き下げるとともに、エネルギーや観光などの分野で、投資を促進し、ビジネスの機会をつくるという内容です。この協定によって、両国の貿易を一気に加速させて、石油以外の貿易額を、5年以内に、現在の10倍以上にあたる年間100億ドル(日本円で1兆3000億円)以上に拡大させる効果が期待されています。また、今月、両国を結ぶ直行便が毎日運航することになりました。

Q3:
異例のスピードで自由貿易協定が結ばれた背景には何があるのですか。

A3:
両国の利益と思惑が一致したということです。

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UAEでは、先月、ハリファ前大統領が亡くなり、イスラエルとの国交正常化を実現させたムハンマド前皇太子が、新しい大統領に就任したばかりです。とくに力を入れている脱石油の経済改革を進めるため、イスラエルのITや農業などのハイテク技術を積極的に導入したいと考えています。
一方、イスラエルは、長年の懸案であるパレスチナ問題の解決を棚上げして、UAEとの経済関係を大きく発展させ、それを足掛かりに、他のアラブ諸国とも関係を強化したいと考えています。
もし、双方の思惑通り、ビジネスが拡大すれば、中東の経済を大きく変える可能性があります。その一方で、パレスチナ問題が置き去りにされ、パレスチナ人やアラブの民衆に不満が広がり、地域の不安定要素となる恐れもあります。

(出川 展恒 解説委員)


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