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欧州 マイナス金利政策終了へ 日本も注目

櫻井 玲子  解説委員

日本と同じようにマイナス金利政策をとってきたヨーロッパ中央銀行が、近く、その政策を終える見通しとなり、各国の金融関係者の関心を集めています。
櫻井解説委員です。

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Q こちらのイラスト、ヨーロッパ中央銀行のラガルド総裁が、「出口」へ向かおうとしていますね?

A はい、来月から利上げを再開し、9月にもマイナス金利政策を終了させる見通しです。マイナス金利政策は8年前、ヨーロッパの物価が低迷し、このままでは日本のようにデフレになってしまうとして導入された政策です。本来はプラスかゼロの金利を、マイナスにすることで、市場に出回る資金を増やし、物価を押し上げる、という異例の政策ですが、これが終了となれば、金融政策の大きな転換点となります。

Q なぜマイナス金利をやめるんですか?

Aロシアのウクライナ侵攻の影響で食品やエネルギー価格が高騰し、ユーロ圏の消費者物価は前の年の同じ月とくらべ8パーセントも上昇しているからです。また興味深いのはラガルド総裁が、戦争が収束したとしても、脱炭素化といった時代の変化の影響で、長期的にも物価が上がる、とみていることです。このため、金融政策も大きく舵をきる、というのですが、気になる点もあるんです。

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Q どんな点ですか?

A 金融を引き締めれば、物価は下がるかもしれませんが、景気も冷やすことになります。戦争、それに感染症拡大のリスクなどで先行きが不透明な中、物価を下げつつ景気は冷やしすぎることがないよう、調整できるか。ラガルド総裁のハンドルさばきが問われています。

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Q そしてその動きを、日本銀行も見ているようですね?

A はい、実は日銀もマイナス金利政策を導入して、はや、6年がたちます。
「景気がよいから物価が上がる」のではなく、戦争や感染症拡大の影響で物価があがる、いわゆる「悪い物価上昇」が起きている、という点で、日本もヨーロッパと同じ悩みを抱えています。
日銀は、国内の物価上昇は「一時的」かつユーロ圏よりはるかに低い水準であり、現時点での政策変更は考えていないとしています。
ただ日銀の将来の道筋を描くにあたり、ヨーロッパ中央銀行の動きを検証することで、得られるものも、多いのではないでしょうか。

(櫻井 玲子 解説委員)


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