2022年3月に震度6強を観測した地震で、東北新幹線が脱線しました。国土交通省は、新幹線の地震対策を検証する委員会を設置し、5月31日、その初会合が開かれます。
Q:上の図は、学校の教室で新幹線が何か発表していますね。
A:はい。検証委員会では、今回の地震の被害などが報告される予定で、こちらは専門家に説明しているところです。
東北新幹線の地震被害は、脱線、そして高架橋が壊れて線路がゆがんだり、架線を支える電柱が倒れたりしました。
Q:他の新幹線も、検証に関係しているのでしょうか?
A:はい。すべての新幹線について検証が行われるのが、今回のポイントです。
というのも、各新幹線は、過去の地震でいわば宿題を抱えているんです。
1978年の宮城県沖地震では、建設中の東北新幹線で電柱が相次いで倒れました。阪神・淡路大震災では、高架橋が大きく壊れました。新潟県中越地震では、上越新幹線が脱線しました。
それぞれの被害で対策が示され、宿題となっていますが、20年前後前、あるいは40年以上前からの宿題が、実は、まだ終わっていないのです。
Q:具体的にどんな宿題ですか?
A:電柱の補強や交換、あるいは高架橋の補強が終わっていないのが、東北・上越・山陽新幹線です。
脱線対策は路線によって方式が違うのですが、東海道や九州新幹線、そして山陽新幹線は脱線や車両がレールから逸れるのを防ぐガードを線路の間に設置する対策を進めています。しかし、このガード、まだ全線の設置は完了していません。
さらに、3月の地震では、新たな宿題も突きつけられました。
Q:新たな宿題とは、何ですか?
A:東北新幹線は、脱線しても、車両が線路から大きく逸脱するのを防ぐ金属製のガイド(=下図の赤い部分)が取り付けてあります。
しかし、今回の地震では、このガイドが引っかからず、大きく逸脱した車両がありました。
同じ方式は、上越、北陸、北海道新幹線も採用しています。逸脱防止を確実に機能させるためにどうするのか、これが新たな宿題です。
Q:こうしてみると、すべて路線が地震対策について何らかの宿題を抱えているのですね。
A:検証委員会で、過去の宿題である地震対策を加速できるか、新たな宿題をどう解決に結びつけるかが、注目されます。
(中村 幸司 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら