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カンヌのパルムドール 是枝監督2度目の受賞へ期待

名越 章浩  解説委員

世界3大映画祭の1つ、フランスのカンヌ映画祭に出品されている是枝裕和監督の作品「ベイビー・ブローカー」が、日本時間の5月27日未明に現地で上映されました。
「カンヌ映画祭 是枝監督2度目の受賞へ期待」というテーマで、名越章浩解説委員が解説します。

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【映画「ベイビー・ブローカー」とは】
「ベイビー・ブローカー」は、育てることができない子どもを親が匿名で置いていく「赤ちゃんポスト」から子どもを連れ去ろうとした男たちが、思い直して戻ってきた赤ちゃんの母親に見つかり、成り行きから、育ての親になってくれる人を共に探す旅に出るという物語。
「命」や「家族」について考えさせられる作品です。
是枝監督が初めて韓国で製作した映画で、作品の舞台も韓国です。
また出演俳優は、2019年にカンヌ映画祭の最優秀賞・パルムドールに輝いた韓国映画「パラサイト 半地下の家族」で主演をつとめたソン・ガンホさんなど、韓国を代表する俳優たちが務めています。

【2度目のパルムドール受賞への高い壁】
是枝監督は、「パラサイト 半地下の家族」の1年前、2018年に「万引き家族」をカンヌに出品し、日本の映画としては21年ぶりとなるパルムドールを受賞して、大きなニュースになりました。
このため是枝監督には、2度目の受賞が期待されていて、27日未明に現地で上映されたときには、観客から大きな拍手が送られていました。

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パルムドールを競う部門には、プーチン政権を批判してきたロシアの監督の作品など、世界の21作品がノミネートされています。
こうしたライバルたちと競い合う中で、現地での観客の反応は、手ごたえを感じるものだったと思います。
ただ、やはり2度目の受賞の壁は非常に高いといえます。

そもそも1946年から続くカンヌ映画祭の歴史の中で、2度受賞した映画監督は、兄弟で監督を務め受賞したケースも含め、世界でわずか8組しかいません。
ほぼ欧米の監督が占めていますが、1人だけ日本人がいます。

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1983年と1997年に受賞した今村昌平監督です。
あの黒澤明監督でさえ、パルムドール受賞は1回だけで、それだけ2度目の壁は高く、もともと審査員も含め、欧米人中心の映画の祭典ですので、欧米以外の作品にとっては受賞のハードルは高いのです。
しかし、逆にこうした環境だからこそ、受賞することの大きな価値は高いというワケです。

【アジア映画の“現在地”を知る】
今回の是枝さんの作品は、パルムドールを経験した日本と韓国の、いわばアジア最強のコラボレーション作品です。
世界におけるアジア映画の現在地を知る上でも、言語や文化の違いを超えて制作された作品が、どこまで評価されるか注目です。
発表は、日本時間の29日早朝の予定です。

(名越 章浩 解説委員)


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