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国立国会図書館 絶版の書籍もパソコンで閲覧可能に なぜ?

名越 章浩  解説委員

東京と京都にある国立国会図書館で、5月19日から新しいサービスが始まりました。
名越章浩解説委員がお伝えします。

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【国立国会図書館の新サービスとは?】
日本で唯一の国立の図書館である国立国会図書館が始めたサービスは、絶版などで入手が困難となった書籍や論文などの資料が、自宅や職場にいながらパソコンやタブレット端末で閲覧できるというものです。
卒論を書く学生や研究者など、調べものをする人の間で話題となっています。

【新サービス開始の理由】

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国立国会図書館は、国内で発行されたすべての出版物の納入が法律で義務付けられている図書館です。
このため、ほかにはない絶版となった小説とか、古い地図、雑誌、論文も含め、4500万を超える蔵書数をほこります。
こうした資料は、毎年、一部がデジタル化され、データベース化されています。
これまでは、それを閲覧しようとすると、国立国会図書館や、連携している全国各地の公共図書館、それに大学の図書館に直接、出向く必要がありました。
近くに図書館が無い人とか、足の不自由な人にとっては不便さを感じる面もありました。
さらに新型コロナウイルスの影響で、図書館の休館が相次ぎ、閲覧すらできなくなった時期があり、見直しを求める声が高まっていました。
このため、入手困難な資料を個人がパソコンなどで閲覧できるように、著作権法が改正されたのです。

【登録方法と閲覧方法は?】

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19日からは、満18歳以上の人であれば、事前に利用者登録の手続きをしておけば、図書館の開館時間や住んでいる場所などに左右されず、自宅や職場にいながら、入手困難な、およそ152万点の資料に無料でアクセスできるようになりました。
登録も無料でできます。
登録には運転免許証やマイナンバーカードなど、本人確認のできる書類の提出が必要ですが、直接出向かなくても、郵送やインターネットによる手続きも可能です。
ただ、今は、申し込みが急増していて、登録に時間がかかるということです。
登録が完了すれば、「国立国会図書館デジタルコレクション」というウェブサイトにアクセスすれば、閲覧できます。
ただし、半世紀以上前の古い資料からデジタル化されているので、絶版になった途端に閲覧できるというわけではありません。また漫画や、商業雑誌は、閲覧対象ではいないので、ご注意ください。

【来年1月からは印刷も可能に】

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そしてこのサービス。来年1月からは、閲覧だけでなく、印刷も可能になる予定です。
ただ、資料のほとんどは、まだ著作権が切れておらず、作者の権利にも配慮しないといけません。
このため、例えば、印刷したら利用者のIDや氏名が印字されるなど、不正コピー対策が施される予定です。
利便性と作り手側の権利の両方を考えつつ、いかに国民の知の財産を共有できる仕組みを整えていけるか注目です。

(名越 章浩 解説委員)


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