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IPEF インド太平洋経済枠組みとは その狙いと内容

櫻井 玲子  解説委員

アメリカがアジアの国々との連携強化を目指して提唱しているIPEF(アイペフ)=インド太平洋経済枠組み。
バイデン大統領が今週末に日本を訪問するのを前に、その枠組みの中身に、関心が集まっています。櫻井解説委員です。

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Q バイデン大統領がIPEFという新しい家に、各国を招き入れようとしていますね?

A はい。アメリカとアジアの経済連携といえば、元々はTPP・環太平洋パートナーシップ協定がありましたが、トランプ政権のときにアメリカが脱退を決め、その間に中国がアジアとの関係を深める動きがみられました。
こうした動きも念頭に、バイデン大統領はアジア各国との関係を再び強化しようと、新しい枠組みの立ち上げを、来日にあわせて、発表するとみられています。
ただ、このIPEF、TPPと同じように経済連携の強化を狙ってはいても、その設計がだいぶ、違うんです。

Q どう違うんですか?

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A IPEFは▼貿易▼サプライチェーンの強化▼脱炭素化▼それに国際課税といった柱を軸に、各国が連携する構想ですが、アメリカへの輸出拡大につながる関税の引き下げは交渉しない、としている点が、TPPとは大きく異なります。
また通常の多国間協定とは違い、議会の承認は得ず、緩やかな連携を目指す方針です。
ただ、ASEAN諸国などの間ではこれだと「参加をしてもあまりメリットがない上、アメリカの関与を嫌がる中国との関係が悪化するかもしれない」と懸念の声もあり、参加を呼びかけられても、二の足を踏む国もいるようです。
アメリカは、各国が枠組みのすべてに賛同しなくても、参加したい分野だけを選んで参加できる、珍しい仕組みも検討しているようですが、どこまで賛同を得られるかが、注目されます。

Q 日本はどうするのでしょうか。

A はい、参加を表明する方向で調整をすすめています。
本来であればアメリカがTPPに復帰するのが望ましく、引き続き働きかけは続ける方針なんですが、アメリカ国内の反対が根強く現状では難しそうです。
厳しい国際情勢の中、インド太平洋地域の繁栄と平和を守るために、まずは目の前のIPEFをどう具体化させるか。日本も、アメリカとともに、知恵を絞ることが求められそうです。

(櫻井 玲子 解説委員)


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