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レバノン 未曾有の経済危機の行方は?

出川 展恒  解説委員

かつてない深刻な経済危機に直面する中東のレバノンで、15日、議会選挙が行われました。国を立て直すきっかけとなるかが注目されます。出川解説委員です。

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Q1:
レバノンの選挙に注目するのはなぜですか。

A1:
国のシンボル「レバノン杉」をイラストにしました。
レバノンは、イスラム教とキリスト教、合わせて18もの宗派が複雑に入り組む「モザイク国家」と言われ、かつて15年に及ぶ激しい内戦を経験しました。シリアやイスラエルなど近隣諸国の介入を受け、多くの難民も抱え、中東全体の安定のカギを握る国です。議院内閣制で、新しい政権を決める選挙となります。

Q2:
経済危機は、どのくらい深刻なんですか。

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A2:
国家財政が破綻し、おととし、デフォルト、すなわち、国の借金を返せない状態に陥りました。通貨は10分の1に暴落し、物価が高騰、国民の7割以上が貧困状態にあります。背景には、宗派対立による政治の混乱と腐敗、新型コロナウイルスの感染拡大、さらには、おととし首都ベイルートの港で起きた大爆発事故があります。これに加え、ウクライナ危機が、拍車をかけています。小麦の大部分をウクライナからの輸入に頼ってきましたが、それが止まり、主食のパンは5割以上も値上がりしました。

Q3:
今回の議会選挙は、危機を脱する突破口となるでしょうか。

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A3:
選挙後の混乱が予想され、難しそうです。イランの支援を受けるイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」を中心とする勢力が、前回に続いて、過半数を維持するかが、最大の焦点です。
結果はまだ判明していませんが、現地の報道によりますと、ヒズボラと連携する複数の現職議員の落選が伝えられ、過半数の維持は難しく、イランの影響力は若干削がれる見通しです。
レバノン政府は、先月、IMF・国際通貨基金から、多額の融資を受ける合意をとりつけていましたが、徹底した財政改革や腐敗防止策を実行するのが条件です。議会選挙後、速やかに新たな首相を選び、思い切った政治の刷新が必要です。しかし、国民の政治不信は根深く、新政権発足までに数か月以上かかるという観測もあり、この危機を脱する道筋は見えません。

(出川展恒 解説委員)

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