フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相が12日、NATO・北大西洋条約機構への加盟を速やかに申請すべきだとの立場を表明しました。同じ北欧のスウェーデンも一両日中に結論を出す見通しで、NATO拡大に反対するロシアは強く反発しています。
●イラストは頑丈な柵を作ろうとしているところですね。
フィンランドはロシアと1300キロにわたって国境を接し、第二次世界大戦後は軍事的に中立を保ってきました。スウェーデンも200年にわたって軍事的非同盟を貫いてきました。ところがロシアのウクライナ侵攻後NATOへの加盟を求める世論が、このように一気に高まりました。NATO拡大に反対するロシアが皮肉にも北欧2か国のNATO加盟の動きを加速させたのです。明日14日にはフィンランドの与党・社会民主党が加盟申請への支持を打ち出す見通しです。一方、スウェーデンではきょう13日に議会が安全保障政策の見直しについて協議し、15日にはこれまでNATO加盟に反対してきた与党・社会民主労働党が新たな立場を表明し、週明けにも加盟申請の方針を発表するものと見られます。
●申請すればすぐに加盟が認められるのですか?
加盟には30か国すべての議会の承認が必要で、通常だと4か月から1年近くかかりますが、ストルテンベルグ事務総長は「極めて迅速に承認できるだろう」と述べています。加盟までロシアの脅威にいかに対処するかが今後の課題となりますが、イギリスのジョンソン首相は今週両国を相次いで訪問し、有事の際に軍事支援などを行う安全保障協定に署名し、両国のNATO加盟を後押ししました。
●ロシアは反発していますね。
北極圏から地中海までNATOが1つにつながるだけにロシアにとっては大きな脅威で、対抗措置をとると反発しています。ロシア政府はこれまでもバルト海に面した飛び地のカリーニングラードに核兵器や極超音速ミサイルを配備する可能性を示唆しており、ロシアによるサイバー攻撃やプロパガンダも懸念され、ウクライナ危機に続く新たな緊張要因になりかねません。
日本もフィンランドと同様にロシアと対峙しているうえ、NATOとはグローバルパートナーの一員として協力関係にあるだけに歴史的な転換期を迎えたヨーロッパの今後の動静を注意深く見守る必要があります。
(二村 伸 解説委員)
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