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フィリピン新政権 独裁者と強権指導者の子女コンビか

二村 伸  解説委員

フィリピンのドゥテルテ大統領の後任を選ぶ、大統領選挙が9日行われます。故マルコス元大統領の長男が支持を広げる中、現政権の強権的な手法を批判する副大統領のロブレド氏がどこまで追い上げるか注目されます。

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Q.山の頂上に2つの椅子がありますが、大統領選挙と副大統領選挙が別々に行われるのですか?

はい。大統領選挙は、20年あまりにわたって独裁体制を築いたマルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏が世論調査で5割をこえる支持を集めています。また、副大統領選挙は強権指導者として知られるドゥテルテ大統領の長女サラ氏が他の候補を大きく引き離し、この2人が次期政権を担う可能性が高いと見られています。マルコス家とドゥテルテ家は良好な関係にあり、ドゥテルテ大統領の父親はマルコス政権で閣僚をつとめ、大統領自身も逃亡先のハワイで死去したマルコス元大統領の遺体を英雄が眠る墓地に埋葬することを反対の声を押し切って認めるなど関係が深いのです。

Q.父親が独裁者だったことに国民の抵抗はないのでしょうか。

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1986年のピープルパワー革命で失脚したマルコス家が再び国を支配することに当時を知る人は懸念を強めていますが、フィリピンは人口が1億1千万人あまり、平均年齢25歳の若い国で、有権者の過半数が独裁政権時代を知らない世代です。国民のインターネット利用時間が世界でもっとも長いと言われるフィリピンで、SNSを駆使してマルコス家に有利な情報を広め、若者の支持を取り付けるマルコス氏の戦術が功を奏しているようです。

Q.この2人が次期政権を担うことになるとフィリピンはどうなるのでしょうか?

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マルコス氏はドゥテルテ政権の路線を継承するとしており、中国との融和的な関係を維持するものと見られます。同時にアメリカとの同盟関係も維持し、バランスをとりながら外交を進めるのではないでしょうか。先月過去最大規模の共同軍事演習が行われ、アメリカもドゥテルテ後を見据えて活発な動きが見られます。日本も経済的な結びつきに加えて先月フィリピンと2プラス2、外務防衛担当の閣僚会合を初めて開催するなど今後に向けて関係を強化しています。南シナ海の要衝に位置するフィリピンの次期政権の行方を米中、そして日本は高い関心をもって見守っています。

(二村 伸 解説委員)


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二村 伸  解説委員

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