ロシアへの制裁を強化しているアメリカは、インドからどこまで協力を取り付けられるかに苦慮しているようです。髙橋解説委員とお伝えします。
Q1)
けさのイラストは、バイデン大統領とインドのモディ首相の手が離れてしまいそう?
A1)
いまアメリカは、ウクライナを侵略したロシアに対し、日本やヨーロッパ各国とともに、制裁を強化しています。ところが、中国は制裁に反対。インドもまた欧米と一線を画し、制裁には慎重な立場を崩しません。
先週、アメリカとインドは、外務・防衛の閣僚協議=いわゆる「2+2」を開きましたが、そうした基本的な立場の溝は埋まりませんでした。
Q2)
なぜインドは、対ロシア制裁で足並みを揃えない?
A2)
インドは、冷戦時代からどの国とも同盟は結ばない一方で、兵器の大口の供給元でもあるロシアとは、伝統的な友好関係を維持しているからです。
ロシアの侵略行為を認めたわけではありません。しかし、ウクライナ危機のあと、インドは、ロシアから安い価格で石油や石炭などのエネルギー輸入を実は増やしているのです。コロナ禍で落ち込んだ経済復興が目的のようですが、このままではインドは中国と並び、対ロシア制裁のいわば“抜け穴”になりかねないと、アメリカは懸念しています。
Q3)
では、バイデン大統領は、どう対応する?
A3)
いま欧米各国は、ロシアと取引する第3国の個人や企業にも制裁を科す“二次的制裁”の是非を議論しています。ただ、インドは、アメリカにとって、中国との競争で、日本やオーストラリアとともに、「クアッド」と呼ばれる枠組みをつくる大切なパートナーです。仮にインドに“二次的制裁”を科せば、「クアッド」の協力そのものが崩れかねません。クアッド首脳会議は、来月下旬、日本で開かれ、モディ首相もバイデン大統領とともに出席する方向で調整が進められています。
はたしてインドから対ロシア制裁で協力を取り付けられるのか?ウクライナ危機が長期化する中で、アメリカのインド太平洋戦略もまた、試練に直面しています。
(髙橋 祐介 解説委員)
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