食品から家畜用の飼料にまで、幅広く使われるトウモロコシ。
その価格がおよそ10年ぶりともいえる高値の水準まで上昇しています。
櫻井解説委員です。
Q とうもろこし価格の高騰といえば、やはりロシアによるウクライナ侵攻の影響が大きいのでしょうか。
A はい、世界有数の生産国ウクライナからの輸出が滞っているのが最大の要因なのですが、そのほかにも、懸念材料があるんです。
一つは、中国です。中国は世界第2位のトウモロコシ生産国ですが、コロナの感染再拡大でヒトやモノの行き来が制限され、春の作付けが遅れて生産に影響が出るおそれも、指摘されています。こうした不安もあって、中国がアメリカから、トウモロコシを大量に買い付ける動きも出ています。
ところが今度はそのアメリカでも、天候不順が心配されているほか、農家がとうもろこしの作付けを減らす計画をたてていて、ますますとうもろこしが足りなくなるのでは?という声もあるんです。
Q トウモロコシの需要が高まりそうなのに、なぜ生産を減らすんですか?
A トウモロコシは大豆などとくらべ肥料を多く必要とする、といわれますが、その肥料も、生産大国ロシアからの輸出が滞る懸念から、価格が高騰しています。
このため、コストがかかりそうなトウモロコシの生産を、敬遠する農家が増えているようなんです。
そして最後にもう一つ。価格高騰には、バイデン大統領の最近の発言による影響も指摘されています。
Q どんな発言ですか?
A トウモロコシを原料としたバイオ燃料を、高騰するエネルギー対策として活用していく、積極的に推進する、と発表したんです。ガソリン価格の値上がりに対する国民の不満に応えると同時に、秋の中間選挙に向けてまさに「コーンベルト」といわれる中西部の農業地帯に支持を広げたいという狙いがあってのことです。
が、逆にこれがトウモロコシの需要を拡大し、価格を押し上げてしまうのではと心配する声もあがっています。
トウモロコシなどの食料不足や価格高騰は、世界中の人々の食卓に大きな影響を及ぼします。有事や天候不順が続いても、食料を安定的に確保できる「食料安全保障」をどう強化するかが今、あらためて、問われています。
(櫻井 玲子 解説委員)
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