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ウクライナ報道と"共感疲労"

竹田 忠  解説委員

連日、ウクライナからのニュースを見てショックを受け、
心が疲れたり、ふさぎこんでしまったり、という思いをされた方は
いないでしょうか?これは「共感疲労」と呼ばれる現象なんだそうです。
竹田 忠解説委員に聞きます。

Q①この話し、たぶん私もそうだと思い当たることがあるんですけど、
「共感疲労」という言葉があるんですか?

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そうなんです。これは心理学で使われている言葉で、
もともとは医療や介護で働く人たちが、
病気などで苦しむ人たちの世話をしているうちに、
自分も苦しくなって疲れてしまう。
そういう現象をさす言葉なんです。

Q②それが今、ウクライナのニュースを見ている人の中にも
起きているんじゃないかと?

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A
そうなんです。実は、この話しについて
社会心理学が専門の新潟青陵大学教授の碓井真史さんに
先週、NHKのラジオで話してもらったところ、
多くのリスナーから、それは私のことだ、
私もそうだという反響が多数寄せられたんです。

Q③たとえば、どんな?

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A
「ウクライナのニュースをみるたびに心配や恐怖の気持ちになる」
「自分の心が現実を受け止める限界に達してしまった。
 しばらくはテレビを観ないようにしている」
また、中には
▼「自分がこれだけ辛く感じているのに
なぜあなたは共感しないのかと言って責められた」といった声もありました。

Q④では、どうすればいいのでしょう?
碓井さんによると、
▼心が疲れたと思ったら、刺激のあるTVの映像から離れて、
ラジオや新聞からも情報を得るようにする。
▼自分を責めるのではなく、避難している人を支援するなど
まず、できることからやってみる。
▼そしてそのためには、自分の心と体を大事にして生活する。
そういうことをあげられています。

ただ一つ気になるのは、
最近ウクライナからは、
市民殺害や戦争犯罪が疑われるニュースが増えていて、
むごさがましています。
だからこそ、我々はしっかり伝えないといけないんですが、
ではどう配慮しながら伝えるのか、
そこは、メディアがそれぞれ議論を続けていくことが大事だと思います。

(竹田 忠 解説委員)


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