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中国コロナ感染増加も『ゼロコロナ』政策堅持?

石井 一利  解説委員

Q1:中国の新型コロナについて、石井一利解説委員です。
中国では、感染の再拡大で当局が対応に追われていますね。

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A1:中国では、おとといの新規感染者数が1万3000人を超え、そのうちおよそ7割を占める上海では、外出制限が行われています。
中国では、2年前、最初に感染が広がった武漢以降、厳しい移動制限と、大規模な検査などによって、感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策がとられ、これまで感染を抑え込んだのは、共産党統治の正しさだとアピールしてきました。
習近平国家主席は、先月、「感染拡大の防止」のための「ゼロコロナ」政策は維持した上で、「経済発展」も両立するよう指示しています。

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Q2:感染が拡大する中、「ゼロコロナ」政策で、経済を両立させるのは、難しい要求ですね。

A2:「安定」を最優先とする習指導部としては、なんとしても実現させなければなりません。
といいますのも、中国経済は減速傾向が続いていて、習指導部が看板政策だとした「ともに豊かになる」、「共同富裕」は、ひとまず目立たないようにせざるを得ない状況です。
中国でも、感染力の強いオミクロン株が広まっていて、仮に中国全土にある都市の10分の1が2週間封鎖された場合、日本円で5兆7000億円の損失となる可能性も指摘されていて、移動制限は、なるべく狭い範囲で短期間にとどめたいところです。
しかし、規制を大幅に緩和すれば、感染者が一気に増える懸念もあります。
中国政府には、経済が悪化しても、感染者が増加しても国民の不満が高まりかねないという危機感があります。

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Q3:国民からの批判は気になるものですか?

A3:中国では、ことし秋にも5年に一度の共産党大会が開催され、習主席が、党のトップを続投し、異例の3期目入りを目指すと言われていますので、国民の批判が高まれば、指導部人事にも影響しかねません。
上海市のトップの書記を務める李強氏は、習主席のかつての部下で、信任も厚いとされ、さらなる昇進も取りざたされていますので、失敗は許されません。
習指導部は、難しい舵取りが続きそうです。

(石井 一利 解説委員)


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