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ウクライナ危機 実を結ぶか トルコの仲介

出川 展恒  解説委員

ウクライナで激しい戦闘が続く中、先週、ロシアとウクライナの停戦交渉が、トルコで行われました。停戦実現の見通しは立っていないものの、双方の間で歩み寄りも伝えられます。精力的に仲介するトルコの立場と戦略について、出川解説委員に聞きます。

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Q1:
トルコが熱心に停戦を仲介しているのは、なぜでしょうか。

A1:
トルコのエルドアン大統領は、今回の軍事侵攻が始まる前から、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を重ね、先月10日には、双方の外相どうしの直接会談を実現させました。トルコにとっては、どちらも黒海を隔てた重要な隣国です。戦争が長期化し、地域が不安定化する事態は、何としても避けたいと考えているのです。

Q2:
トルコは両国と、具体的にどんな関係を築いているのですか。

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A2:
まず、トルコにとってロシアは、天然ガス、および、小麦の最大の輸入元です。また、トルコは、NATO・北大西洋条約機構の加盟国でありながら、ロシアから最新鋭の地対空ミサイルシステムを導入しました。外交面では、シリアの内戦終結に向けた和平のとりくみで、協力しました。
一方、トルコは、ここ数年で、ウクライナからの小麦の輸入を大幅に増やしたほか、国産の攻撃用無人機をウクライナに売却するなど、経済と軍事の両面で関係を強化してきました。
加えて、トルコには、ロシアからもウクライナからも、大勢の観光客が訪れます。戦争が長引けば、観光収入も激減し、低迷するトルコ経済には大きな打撃となります。

Q3:
トルコの仲介は、実を結ぶでしょうか。

A3:
双方の主張の隔たりは、まだ相当大きく、楽観はできません。ただ、エルドアン大統領は、一方に肩入れすることなく、どちらの大統領にも意見を言える関係を維持しています。先週の交渉で、ウクライナ側は、NATOへの加盟を諦めるかわりに、自国の安全を保障する新たな枠組みをつくる提案を行ったと伝えられます。

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エルドアン大統領は、関係する国々とも連携し、両大統領を招いての3か国首脳会談による解決を目指しています。当面、その動向から目が離せません。

(出川 展恒 解説委員)


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