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霞が関 志望者受け付け中 『ブラック』脱却は?

田中 泰臣  解説委員

今年春の国家公務員試験の申し込みが現在受け付け中で、国は人材確保に向けた取り組みもしています。

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Q)どこかの省が学生を手招きしていますね。

A)内外で課題が山積する中、国を支える人材を何とか確保したいとの思いです。
いわゆる「キャリア官僚」を目指す、総合職試験の申し込み者数。去年は前年に比べて過去最大の落ち込みとなりました。このため採用を担う人事院は、今回から受付期間を1週間ほど拡大しました。また「デジタル」という新たな試験区分を設けて、IT系の知識がある学生が試験を受けやすくしました。ただ私は志望者が減っている大きな要因の1つは、官僚たちの働き方にあると思います。

Q)ブラックだとも言われますよね。

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A)一昨年度の調査では国会や予算などに対応する職員の1割超が、過労死ラインの目安とされる月平均80時間を超える残業をしていました。
職務上、民間と違って大臣が緊急の業務と認めれば上限を超えて残業を命じられる規定があります。ただ人事院も、働き方を変えなければ志望者は上向かないと危機感を抱いています。

Q)働き方改革は進めているのですか?

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A)人事院は去年初めて国会を名指しして残業の削減に協力を要請しました。議員によっては質問内容を各府省に通告するのが前日深夜になり、それから答弁を作成するという業務が、残業が増える要因になっているためです。来月には人事院に、各府省の勤務実態を調査・指導する部署を設けることにもしています。ただ、ようやく本腰を入れ始めたという印象です。

Q)すぐに改善とはいかないのでしょうか?

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A)国家公務員の恒久的な定員は、昨年度まで行政改革で40年以上にわたって減り続け、それが負担増の根本要因との指摘もあり、定員や人員の配置を大胆に見直せば改善する可能性も高いと思います。ただ働き方のみならず、若手の官僚からは、大量の資料を紙で用意する必要があるなど非効率な業務が多いとの声も出ています。若いうちから、やりがいを持って仕事ができるような方策も講じていく必要があると思います。

(田中 泰臣 解説委員)


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田中 泰臣  解説委員

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