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バイデン訪欧 同盟の結束は?

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのバイデン大統領による就任以来3回目となるヨーロッパ訪問について、髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
けさのイラストは、各国の首脳たちがウクライナの戦況をにらんでいる?
A1)
バイデン大統領は、NATO=北大西洋条約機構、日本も加わるG7=主要7か国、それにEU=ヨーロッパ連合の首脳会議にそれぞれ出席し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、対応を協議し、同盟国や友好国との結束を固めたいとしています。

Q2)
一連の首脳会議では、どこに注目?
A2)
ポイントは3つ。▼まずウクライナへの軍事支援や経済支援をいっそう強化すること。▼次に、対ロシア制裁を強化するため、西側諸国とともに新たな制裁措置も発表します。
そうした制裁に中国は反対し、インドなども明確な立場を示していませんが、アメリカは「制裁の効果を損なうような如何なる国による試みも阻止する」としています。
この会議のあと、バイデン大統領は、ウクライナと国境を接するポーランドを訪問し、ウクライナから国外に避難を余儀なくされた人々への支援を拡充する意向です。その上で、▼アメリカ軍の駐留兵力を調整し、NATOの同盟国を防衛する揺るぎない決意を改めて確認したいとしています。「ONE FOR ALL, ALL FOR ONE=ひとりは皆のため、皆はひとりのため」それがNATOによる集団防衛の根幹だからです。

Q3)
NATOは結束を固められそう?
A3)
確かにロシアによる侵略行為について、NATOの同盟国の中でも危機感に温度差はあるようです。バイデン大統領は、米ロの全面衝突のリスクがあるNATOによるウクライナへの軍事介入には一貫して否定的です。去年8月のアメリカ軍のアフガニスタン撤退に伴う混乱の際は、大統領自身のリーダーシップを疑問視する見方もありました。今回のウクライナ危機をきっかけに、ヨーロッパの安全保障にかかりきりになれば、バイデン政権のインド太平洋戦略にも影響が生じかねません。
アメリカはいざという時、本当に頼りになるか?バイデン大統領は、同盟を主導する手腕を試されることになりそうです。

(髙橋 祐介 解説委員)


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