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原発事故 東京電力の賠償「上積み」が確定

山形 晶  解説委員

福島第一原発の事故から11年。
福島の住民や避難した住民が賠償を求めた集団訴訟で、今月(3月)、最高裁で初めて一部の判決が確定しました。どんな意味があるのでしょうか。

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原発事故を起こした電力会社は原則として賠償責任を負うという法律があります。
東京電力は国の基準に基づいて、避難の費用や慰謝料などの賠償金を支払っていますが、原発事故特有の被害、地域社会全体が損なわれるという被害に見合っていないとして、全国で30件以上の集団訴訟が起こされました。
最高裁は、今月、このうち6件で東京電力の上告を退けました。
2審の高裁では国の基準を超える額の賠償が命じられていましたので、東電にとっては「上積み」が確定した形です。

これによって、どんな影響があるのでしょうか。

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まずは、ほかの集団訴訟への影響です。
判決の中には、国の基準に明確に盛り込まれていない損害を認めて増額したものが多くあります。
生活の基盤である「ふるさと」を失ったという損害です。
東電は、国の基準を超える損害はないと主張してきましたが、ほかの訴訟でこれまでのように争うのは難しくなります。
そして、原告や弁護団が、国の基準そのものを見直すよう求めていることにも注目です。
裁判を起こしていない人も同じように被害を受けているのだから同じように賠償すべきだという訴えです。
基準を定めているのは国が設けた審査会ですが、今回の司法判断を踏まえて、見直すかどうかの議論が必要になっていると思います。

そして、集団訴訟では、国の責任も争われています。
これについては2審の高裁で判断が分かれていて、最高裁が夏ごろまでに統一判断を示す見通しです。
国の責任というのは、原発の規制を担っている者として、事故を防ぐことができたかどうかです。
原則として原発事故の賠償責任を負うのは電力会社ですが、もし、監督する立場の国の対応に過失、つまり過ちがあったのであれば、賠償責任を負うことになります。

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ポイントは巨大な津波を予測できたかどうか。
つまり、あの事故が、防ぐことができた「人災」だったかどうかです。
最高裁がこの点について判断を示すのは初めてです。
事故から11年ですが、今年が司法判断の「ヤマ場」なので、注目したいと思います。

(山形 晶 解説委員)


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山形 晶  解説委員

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