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ロシアがウクライナへ軍事侵攻 実現するか?宇宙ステーション運用延長

水野 倫之  解説委員

国際宇宙ステーションについてアメリカは、運用を2030年まで6年延長する方針を示し、各国に協力を求めてきている。延長は実現するのか水野倫之解説委員の解説。

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イラスト、多くの国が協力してるようすで描いてみたが、宇宙ステーションは冷戦下、当時のレーガン大統領が西側結束のため建設を呼びかけ日本などが参加。その後冷戦終結でロシアも加わり15か国によって2011年に完成し、
国際協力の象徴となり、宇宙実験などが行われてきた。
ただ老朽化もあり運用は2024年までとされてきたが、
アメリカは今月、2030年まで延長した後、地球に落として廃棄する計画を発表、
各国に延長への同意を求めている。
アメリカは2025年以降、有人月面探査を継続的に行う計画で、
地球近くの活動は民間に任せる方針。民間が独自にステーションを作る計画も進んでいるが 
その実現は20年代後半になる見込みで、それまで延長が必要と判断。
もう一つは宇宙進出を強める中国への牽制。
独自のステーションを建設中で3人の飛行士が滞在中、
低軌道に中国の拠点だけという事態は避けたい。
各国の対応だが、まず日本は政府内で議論を始め、月面探査に向けて
有人宇宙技術を磨く拠点が必要だとして延長に同意すべきという意見も出ている。
ただ、今後の月探査の経費に加え、宇宙ステーション経費も引き続きかかることになるわけで、
コスト削減の具体策を示す必要あり。

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そして今後大きな焦点となってくるのは、ウクライナに軍事侵攻したロシア。
今、米露は激しく対立しているが、
ロシアは宇宙ステーションの姿勢制御など主要部分を担っているので、
ロシアの協力なしでは運用延長は事実上困難とみられる。
過去にクリミア併合を巡る問題で対立した時も、
宇宙ステーションの活動だけは協力が継続された。
宇宙ステーションが今後も国際協力の象徴であり続けることができるのか、
宇宙関係者は軍事侵攻の行方に注目。

(水野 倫之 解説委員)


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