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緊迫ウクライナ情勢 ロシアが文書で回答 プーチン大統領の思惑は

安間 英夫  解説委員

緊迫するウクライナ情勢をめぐって、ロシア政府は2月17日、アメリカ政府に対し、新たに文書で回答し、ウクライナに軍事侵攻する意図を改めて否定しました。
その一方で、ウクライナのNATO=北大西洋条約機構への加盟は、アメリカなどと武力衝突を引き起こすことになると警告し、NATOの拡大をめぐる問題で譲歩するよう欧米側に迫りました。プーチン大統領は何を考えているのでしょうか。その思惑を探ります。

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Q1)プーチン大統領が首を伸ばして何か見つめていますね。
A1)
ロシアがアメリカに文書で回答したということですので、その反応やアメリカ側に外交交渉で譲歩する用意があるのか知りたいと考えていると思います。
折しも2月18日から3日間、ドイツで世界の首脳・閣僚、関係者が集まる「ミュンヘン安全保障会議」という国際会議・フォーラムが開かれます。
地元ドイツのショルツ首相、アメリカからハリス副大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領も出席します。
この会議、かつて2007年には、プーチン大統領が出席し、今議論の的となっているNATOの東への拡大について強い不満を表明したことがありました。
欧米とロシア、立場の違いがあってもオープンに意見をたたかわせる場となってきました。

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Q2)ロシアから誰が出席するのですか。
A2)
それがことし、ロシア政府は、閣僚など代表を派遣しないと発表しました。
ロシア政府は、欧米が会議を主導する色彩が強まり、関心が薄れていると説明しています。
ただその本音を考えてみますと、「ミュンヘン安全保障会議」では、ウクライナ情勢が最大のテーマとなり、ロシアに非難が集中することが予想されます。
むしろ今、個別に首脳や外相同士の外交交渉が続いていますし、さらにより公的な国連安全保障理事会でも審議が行われたので、むしろそうした場で成果を得たいと考えたのではないかと見られます。
しかし、ロシアの動向はここまで世界に大きな不安を与えてきました。
こうした時こそあらゆる機会をとらえて、ロシアの「ウクライナへの侵攻はなく、その計画もない」という自らの立場を説明することが必要だったのではないでしょうか。

Q3)ロシアはどう出てくるのでしょう。
A3)
ロシアのプーチン政権、アメリカのバイデン政権はともに、外交による解決の可能性と重要性を口にしています。
アメリカとの外交交渉で譲歩を引き出したいはずです。

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「ミュンヘン安全保障会議」の場では2月19日、日本を含むG7の緊急外相会合が行われます。
さらに今行われているロシアとベラルーシの合同軍事演習も2月20日に終了する予定です。
こうした日程を踏まえ、ロシアとアメリカを中心とする外交交渉が前進するのか、またロシア軍がこのあと部隊を撤収させるのか、注視していく必要があります。

(安間 英夫 解説委員)


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