北京オリンピックスキージャンプのノーマルヒルで金メダルを獲得した小林陵侑選手、あすからのラージヒルでの連続メダルに期待がかかる。
その強さに世界最速のスパコン・富岳が迫った。水野倫之解説委員の解説。
イラストは富岳が縁の下の力持ちとなっているようすで描いてみた。(もちろん漫画家に頼んで)
というのも今回は日本の最先端科学でジャンプ陣を支えようという取り組みだから。
今回北翔大学と理研などの研究グループが、小林選手に実際にジャンプしてもらって動作を記録、気流の変化を富岳で計算。
その結果がこの2画面、着地直前の背中の空気の流れを表していて、左が小林選手、右が一般の選手。
一般の選手は気流が大きく乱れているのに対し、小林選手は乱れが少ないことが分かった。
最後まで前傾姿勢を保ち続けるなど姿勢を調整しているとみられる。
気流が乱れると空気抵抗が大きくなって下向きの力がかかり、失速につながりやすい。
これに対し乱れが少ないと抵抗が小さく、体を持ち上げる力 ・揚力が増して飛距離を伸ばすことができるということ。
もちろん小林選手、ほかにも踏み切りの鋭さなど強みがあるが、今回強さの一端を科学的に解明できた意義は大きく、グループでは日本のジャンプ陣全体の底上げも狙っている。
というのもジャンプに王道の飛び方はない。
選手によって体格などが異なるので、それぞれの個性にあった最適の飛び方を見つけることが必要。
グループでは今後ほかの選手の飛行データも取って、選手ごとに飛び方を提案できればと話す。
そしてさらにその先、選手が一度ジャンプした後、即、データを遠隔で富岳で計算して選手に伝え、2回目のジャンプに生かしてもらうことができるかも検討したいという。
世界最速の富岳なので、その計算能力を生かせば時間的、そして技術的には可能性は十分あるとグループはみる。
日本の最先端科学によって選手の記録アップにつながるのか、今後の研究に期待するとともに、ラージヒルでの小林選手の活躍に注目。
(水野 倫之 解説委員)
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