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"最終段階" 核協議の行方は?

出川 展恒  解説委員

「イラン核合意」を立て直すためのアメリカとイランの間接協議が、8日再開されましたが、極めて重要な局面を迎えているようです。
出川解説委員です。

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Q1:
アメリカとイランの間接協議、このコーナーでもたびたび取り上げてきましたが、けさのイラストは、台車に載せられた「イラン核合意」ですね。

A1:
はい。アメリカのトランプ前政権の一方的な離脱をきっかけに、崩壊の危機にある「核合意」を立て直そうと、去年4月から、オーストリアのウィーンで、EU・ヨーロッパ連合などの仲介で、アメリカとイランの間接協議が続けられてきました。先週初め、アメリカの高官が、「協議は“最終段階”にある」と述べ、世界の関心が集まっています。ただ、これを「合意が間近」と解釈するのは楽観的すぎます。

Q2:どういうことですか。

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A2:
アメリカの高官は、あわせて、「協議を永遠に続けることはできない。イランは核合意に戻る決断をする時だ」と述べ、イラン側に譲歩を迫ったうえで、協議が不調に終わった場合には、さらなる制裁など圧力を強める可能性もほのめかしています。つまり、協議が妥結するか、それとも、決裂するかの大きな分岐点に来たと言うことだと思います。イラン側が、ウラン濃縮活動を加速させているため、遠からず核兵器の獲得も可能になるとの危機感が、アメリカや同盟国のイスラエルに共有されています。

Q3:
協議の行方を決めるポイントはどこにありますか。

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A3:
アメリカ側が、イランに核合意を完全に守るよう求めているのに対し、イラン側は、まずアメリカが制裁をすべて解除するよう求め、平行線が続いています。
双方が同時に歩み寄らない限り、袋小路から抜け出すことはできません。間接協議では不十分で、直接交渉も必要でしょう。すべては、トップどうし、バイデン大統領と、最高指導者ハメネイ師の政治決断にかかっています。イラン側の交渉チームは、先月末、本国に戻り、ハメネイ師の判断を仰いだと見られ、仕切り直しの協議は、今月中が勝負となりそうです。ハメネイ師が、あさって11日のイラン革命の記念日に合わせ、どんな発言をするかも注目されます。

(出川 展恒 解説委員)


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