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海保 試験科目減で人材確保

田中 泰臣  解説委員

巡視船や航空機で海の安全を守る海上保安庁の幹部になる職員を養成する海上保安大学校に入学するための学科試験が約30年ぶりに変わります。

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Q)どのように変わるのでしょうか?

A)将来、海上保安庁の幹部になる職員を養成するこの大学校、入学試験には学科や作文、体力測定などがあり、毎年60人前後が入学しています。このうち学科試験は、これまで数学と英語に加えて、物理か化学を選択することになっていました。航海技術や通信技術などを学ぶ必要から、いわゆる「理系」の知識の方が求められるからです。しかし海上保安庁は、今年10月に行われる試験から物理・化学をなくすことにしました。

Q)その理由は?

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A)少子化の影響、また学校の認知度の低さもあって志願者が年々減少、去年は368人と10年前に比べ4割以上減っています。このため受験をしやすくして少しでも志願者を増やしたいというのが理由の1つです。ただ海上保安庁は幹部に求められるものが変わってきていることの方を、大きな理由にあげています。

Q)どのように変わってきているのでしょうか?

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A)沖縄県の尖閣諸島で領海侵入を繰り返すなど、中国が海洋進出を強めていることを背景に、外国船舶と相対する機会、また外国の海上保安機関との交流も増え、国際法の知識や語学力がより求められるようになっていて、「理系」だけでなく「文系」からも優秀な人材を確保したいというものです。
海上保安庁は、尖閣諸島のみならず、近年日本海で問題になっている外国漁船の違法操業、沖ノ鳥島周辺で活動が確認されている中国の調査船などへの対応も必要だとして全体の人員を増やしていっています。それを幹部として担う人材の確保は喫緊の課題ながら、今回の取り組みは、いわば苦肉の策にも見え、それだけ難しい課題とも言えます。

(田中泰臣解説委員)


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