イギリスで新型コロナウイルスの感染防止のため厳しい規制が続く中で首相官邸などで繰り返しパーティーが開かれていた疑惑について、政府の調査報告書が31日公表され、リーダーシップの欠如などが指摘されました。ジョンソン首相は報告書を受けてあらためて謝罪したものの引き続き政権を率いることを強調しました。
Q1.ジョンソン首相は崖っぷちですね。
就任以来最大のピンチです。新型コロナでロックダウン・都市封鎖などが行われていたさなかにパーティーに参加していた疑惑は「パーティーゲート」と呼ばれています。おととし6月首相官邸の閣議室で30人以上が首相の誕生日を祝っていたのをはじめ官邸以外も含めると調査の対象となったパーティーやイベントは16件に上ります。公表された調査報告書は警察が捜査中のため全容は明らかにされませんでしたが、「政権中枢で働く人々に求められる高い規範が守られず、リーダーシップが欠如していた」と指摘しています。警察の捜査終了後には報告書の内容も見直されることになっておりまだ苦境は続きそうです。
Q2.国民の反発も強いでしょうね。
世論調査で首相の仕事ぶりに満足していると答えた人は疑惑が次々と発覚するにつれ、急坂を転がり落ちるように減り続け、先月22%まで落ち込みました。首相は当初「パーティーはなかった」と述べ、決定的な証拠が示されると、「職務上の集まりだった」、「誰もルール違反と言わなかった」などと弁明を重ねてきましたが、自粛を強いられてきた国民にとって厳しい規制を求めた本人がルールを破っていたのではとても納得できないでしょう。辞任を求める人も62%に上っています。
Q3.首相はこの危機を乗り切れるのでしょうか。
与党保守党内でも辞任を求める声が高まっており、一定数の議員が書簡を送ると不信任の投票が行われることになります。キャメロン、メイといった前任者も任期途中での辞任を余儀なくされましたが、国民に人気があったジョンソン首相といえども窮地を脱するのは容易ではなさそうです。緊迫の度を増すウクライナ情勢への対応に加えてパーティー疑惑により今月中の訪日もなくなりました。自らの軽率な振る舞いにより失墜した信頼を取り戻すことができるか、それとも命運尽きるのか、追及の手が緩むことはなさそうです。
(二村 伸 解説委員)
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