中東のイエメンの内戦が、近隣の国を巻き込んで拡大する様相を示していて、原油価格などへの影響も懸念されています。
出川解説委員です。
Q1:
イエメンの内戦は、このコーナーでもお伝えしてきましたが、事態がさらに悪化しているんですね。
A1:
はい。イエメンでは、7年前から、サウジアラビアやUAE・アラブ首長国連邦の支援を受ける「ハディ政権」と、イランの支援を受ける反政府勢力「フーシ派」との間で、激しい内戦が続いていますが、先週、UAEに対する初めての本格的な攻撃が起きました。「フーシ」と言うのは、指導者の名前です。フーシ派は、17日、UAEの首都アブダビにある国営石油会社の施設をミサイルとドローンで攻撃し、3人が死亡しました。
これに対し、サウジアラビア主導の連合軍が、イエメンの首都サヌアや北部にあるフーシ派の拠点を相次いで空爆し、子どもを含む大勢の市民が巻き込まれて犠牲になりました。「世界最悪の人道危機」と呼ばれる状況がいっそう悪化しています。
Q2:
なぜ、今回、UAEが攻撃を受けたのですか。
A2:
UAEとフーシ派の対立激化が直接の原因ですが、両者は、直線距離で1000キロ以上も離れています。フーシ派が、弾道ミサイルや長距離飛行できるドローンを獲得し、攻撃能力が向上したことも背景にあります。今週の月曜(24日)には、フーシ派が、アメリカ軍が駐留するUAEの空軍基地を、ミサイルで攻撃しました。
Q3:
攻撃の応酬がエスカレートする恐れもありますね。
A3:
はい、非常に心配です。
UAEの石油施設が攻撃された後、国際市場で、原油価格が7年ぶりの高値をつけるなど、エネルギー価格が高騰する要因のひとつともなっています。フーシ派は、さらに重要な施設への攻撃も辞さないと警告しています。ここ数年、サウジアラビアの石油施設も攻撃されていますし、UAEには原発もあります。もし、攻撃されれば、放射能汚染など計り知れない被害と影響が懸念されます。
国連のグテーレス事務総長は、攻撃を非難するとともに、事態の鎮静化を強く呼びかけました。サウジアラビア、イラン、アメリカなど、関係するすべての国の最大限の外交努力が求められる局面です。
(出川 展恒 解説委員)
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