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アメリカの高速炉開発に協力協議へ その思惑は?

水野 倫之  解説委員

アメリカが進める次世代の原子炉・高速炉の開発に、原子力研究開発機構と三菱重工などが協力に向けて協議を始めることになり、きのう覚書が締結された。双方の思惑について、水野倫之解説委員の解説。

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イラストは、日米が握手はするものの、別の方向向いている様子。
次世代炉開発という目的こそ一致しているが、思惑は別の所にある。
この高速炉、トラブルが相次ぎ廃炉となった日本のもんじゅと同じ、プルトニウムなどを効率よく燃やせる次世代の原子炉。
マイクロソフト創業者のビルゲイツ氏の企業がアメリカ政府の協力も得て開発を進める。
そのアメリカにとっては、脱炭素で原発を見直す動きに加えて、原発をどんどん世界に輸出し原子力産業の覇権を狙う中国を次世代炉開発で牽制したい思惑。
もんじゅの経験がある日本に協力を求めてきた。

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一方の日本の思惑。
脱炭素もあるが、プルトニウムを繰り返し使う核燃料サイクル計画を何とか維持していることを内外に示したい思い。
もんじゅは核燃料サイクルの中核施設だったが、廃炉でそれがなくなっても日本は核燃料サイクルの旗を降ろしたわけではない。
核兵器の原料ともなるプルトニウムを46トンと大量に抱えているからで、核兵器に転用する意思がないことを示すためにも、エネルギー利用する必要に迫られ、一旦はフランスとの共同開発で高速炉の維持を図ろうと。
ところが頼みのフランスがコストを理由に開発を凍結。
先が見えなくなっていたところにアメリカからお声がかかり、日本にとってはまさに渡りに船だった。

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ただここに大きな課題。政府はそもそも原発の新設は想定していないとしている。
政府の原子力政策は原発に厳しい世論もあって、依然としてあいまいなままで、年改定されたエネルギー基本計画でも、原発の深い議論は避けられてきた。
アメリカと協力という前に、特にいつまでたっても完成しない核燃料サイクル計画の抜本的見直しが不可欠で、これを機会に、原子力の位置づけを真正面から議論していかなければ。

(水野 倫之 解説委員)

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