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燃料デブリ確認なるか 福島第一1号機

水野 倫之  解説委員

福島第一原発事故からまもなく11年。東京電力は、溶け落ちた燃料デブリがいまだ確認できていない1号機で、あすから水中ロボットによる調査を始める。
水野倫之解説委員の解説。

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イラストは病院で1号機が内視鏡検査を受けるイメージにした。
事故では3基で溶け落ちた燃料デブリが格納容器内に散らばった。
強い放射線を出すため、政府・東電はすべて取り出す方針で、これまでに、2号機3号機ではデブリとみられるものが確認でき、2号機は、今年中に手術・少量取り出そうというところまできている。
ところが1号機だけは見つからず、ロボットの投入準備にも手間取り、やっとあすから本格調査して遅れを取り戻そうというというわけ。

調査では直径25㎝の水中ロボット8台を、順次おなかの貫通孔から冷却水に投入して遠隔でカメラや超音波測定器を操作。
半年かけて容器の底にあるとみられるデブリの確認を目指す。

かなり時間かかるのは過去にロボットが構造物にはまるなどトラブルが相次いだことの教訓。

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今回最大の懸念は遠隔用のケーブルが引っかかって動けなくなること。
そこであす投入する1台目は調査はしない。
ケーブルを通す輪っかを磁石で容器の壁に取り付けることだけに専念。
2台目以降がこの輪っかを通ることで、ケーブルがたるんで絡まることがないようにするための工夫で先遣隊の役割を果たすが、その分時間もかかる。
作業員は延べ9か月、操作訓練を繰り返してきてはいるが、カメラの映像頼りでトラブルが起きる可能性もあると思う。

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ただデブリがどこにどんな状態であるのかの確認は廃炉にとって不可欠で、1号機もここを乗り越えない限り、全体の工程は先へ進まない。
とはいえ放射線量が高いところもあるので、東電は工程ありきではなく、作業員の被ばく管理を徹底するなど安全最優先で慎重に作業し、廃炉を前に進めてもらいたい。

(水野 倫之 解説委員)


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