2050年までの脱炭素化をめざすEUで、原子力発電は地球環境にとって持続可能かどうか論争が続いています。
Q.橋の工事が途中で止まっていますね。
橋の先にある脱炭素社会を実現するためにEUが打ち出した戦略が「欧州グリーン・ディール」です。環境を守りながら雇用の創出など持続可能な成長をめざすというものです。それに見合う技術や経済活動に投資を集中させるため、持続可能な活動かどうか明確な基準を設ける必要があり、それを「EUタクソノミー」と呼んでいます。タクソノミーは分類という意味です。ところが原子力を持続可能なエネルギーとして投資の対象とすべきかどうかEUを二分する論争となっているのです。
Q.フランスが原発を入れようとしているのをドイツが阻んでいるのですね。
はい。フランスは発電量の7割以上を原子力エネルギーが占める原発大国です。脱炭素には原子力が不可欠だとして先月新たな原発の建設を発表しました。投資の対象となるかどうかは産業界にとって死活問題です。
一方、ドイツはすべての原子力発電所を来年中に廃止する予定です。そのドイツとオーストリアなど5か国は原発のリスクを理由に投資の対象とすることに反対する共同声明を発表し、今月開かれたEU首脳会議でもフランスやポーランドなど原発容認派との溝は埋まりませんでした。
Q.決着は容易ではなさそうですね。
各国の思惑が絡むだけに難しいですね。さらに原発だけでなく天然ガスの扱いについても論議を呼びそうです。天然ガスは二酸化炭素を出しますが、旧東ヨーロッパの国々は、石炭に代わるエネルギーとして投資の対象とするよう求めています。
Q.EUタクソノミーは日本にも影響があるのでしょうか?
大いにあります。というのは日本の企業がEUで活動したり商品を売ったりする際に
基準を満たさなければ「持続可能でない」と見なされ、資金調達が難しくなることも予想されます。こうした動きはEU以外にも広がる可能性があるだけにビジネスにも持続可能かどうかの意識がこれまで以上に重要になってきそうです。
(二村 伸 解説委員)
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