内戦が続いた北アフリカのリビアでは、24日に予定されていた大統領選挙の延期が決まり、影響が心配されます。出川解説委員です。
Q1:
リビアでは、大統領選挙まで長い道のりだったのですね。
A1:
はい。リビアは、70年前、イタリアから独立しましたが、その後、カダフィ大佐がクーデターで権力を握り、42年に及ぶ独裁体制を敷きました。
10年前、いわゆる「アラブの春」の民衆デモで、カダフィ政権は倒され、その後、国は東西に分裂し、激しい内戦が続きました。去年、国連の仲介で停戦が実現し、独立記念日のきょう、リビアでは初めての大統領選挙が行われる予定でした。
内戦に終止符を打ち、民主国家に生まれ変われるかどうかの選挙です。
Q2:
なぜ、延期になったのでしょうか。
A2:
今回の選挙、西部を拠点とする暫定政府のドゥバイバ首相、東部を拠点に軍事組織を率いるハフタル氏、カダフィ大佐の次男のセイフ・イスラム氏など、100人近くが立候補を申請しました。ところが、候補者資格や選挙のルールをめぐって対立し、選挙管理委員会が延期を発表しました。
民主主義の経験が全くないリビア、選挙のルールを決める段階で躓いたのです。
Q3:
選挙は無事行えるでしょうか。
A3:
選挙管理委員会は、1か月後の投票を提案したものの、異なる勢力が、選挙のルールで一致できるかどうか、わかりません。
リビアでは、指導者らが、国の再建よりも、出身地や部族の利益を優先させ、権力闘争に明け暮れてきました。また、暫定政府側を、トルコやカタール。軍事組織側を、ロシアやエジプトが支援してきました。いわば代理戦争で、外国の軍をどう撤退させるかも難しい課題です。内戦の混乱に乗じて、国際テロ組織が拠点を広げ、大勢の難民が発生しています。もし、選挙を実施できなければ、国の統一は不可能で、内戦が再燃するおそれもあります。石油資源が豊富なだけに、エネルギー市場への影響もあり、国際社会は、今回の大統領選挙を何としても成功させ、リビアを安定に導くことが大切です。
(出川 展恒 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら