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新型ロケットへ 正念場の打ち上げ

水野 倫之  解説委員

三菱重工は、衛星通信大手、イギリスのインマルサット社の衛星をあす、H2Aロケットで打ち上げる。
この商業打ち上げ、新型のH3ロケットのビジネスの成否に大きくかかわるという。
水野倫之解説委員の解説。

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イラスト、関係者がカレンダーに注目しているが、当初きょう21日と発表された打ち上げ日は、天候の影響であすに延期とされたが、この当初日程からおおむね1週間以内に打ち上げられるかどうかが、インマルサット社・三菱重工双方にとって重要。
まずインマル社にとっては、衛星製作にかかった数百億円の投資を早く回収するため、1日でも早く打ち上げて、通信ビジネスを始めたい。
その点、値段が高く商業打ち上げに苦戦してきたH2Aだが、当初日程から天候も含め1週間以内に打ち上げるオンタイム率は世界一高い。

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アメリカの主力ロケットが17%、ヨーロッパが50%なのに対し、73%ととびぬけていて、インマル社がこの点を評価してH2Aを選んだ経緯。
打ち上げ日程に大きく影響するのは機体のトラブル。
三菱重工では毎回のトラブルを対策も含めて分析しデータベースに蓄積。
工場や発射場の作業員の間で共有することで、トラブルは一桁まで減り、オンタイム率を上げることができたという。
そして今回もオンタイムで行けるかどうかは、新型ロケットのビジネスにもかかわるだけに、三菱重工は特に入念に点検を行っている。

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H2Aは近く引退し、三菱重工はJAXAとともに値段をH2Aの半額に抑えた新型のH3ロケットを来年早々に打ち上げる計画。ただ営業が苦戦する中、インマル社だけがH3 とも打ち上げ契約を結んでくれている。
三菱としてはこの唯一の顧客を逃すわけにはいかず、今回も何としてもオンタイムで打ち上げて、H3 のビジネスに弾みをつけていきたいわけ。

新型ロケットにつなげることができるのか、あすの打ち上げに注目。###

(水野 倫之 解説委員)


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