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香港の立法会選挙投票は誰のため?

石井 一利  解説委員

香港では、19日、議会にあたる立法会の議員選挙が行われます。
中国担当の石井解説委員とお伝えします。

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Q1:けさのイラストは、お店のショーウインドーですか?
A1:中国の習近平国家主席が、みずからオーナーを務める店舗を確認に来た様子に見立て、イラストにしてみました。
高度な自治が認められているとされる香港の「一国二制度」は、かつて台湾や欧米などに向けた「ショーウインドー」のような役割があるとも、いわれていました。
しかし、中国政府が統制を強めた影響が、定数90で行われる今回の立法会の選挙に色濃くでています。

Q2:どのような影響ですか?

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A2:香港の立法会選挙は、中国政府が主導して、ことし5月、制度が変更され、立候補するには、「愛国者」であるか事前に審査されることになりました。
また、親中派がほぼ独占する選挙委員の推薦も必要になったため、香港の政府に批判的な「民主派」政党は、候補者の擁立を断念しました。
その結果、153人の立候補者ほとんどが「親中派」です。
香港メディアは、親中派以外の候補者は、わずか10人あまりだと伝えています。
今回の選挙で親中派の圧勝は確実で、「一国二制度」の形がい化がいっそう進み、「一国」がより強調される形になりそうです。

Q3:選挙の焦点はなんですか?

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A3:香港の街中は、現在、表向き平穏ですが、市民の選挙に対する関心は低調だと伝えられています。
当局は、「成功だ」と示そうと、投票を呼び掛けていて、投票率が焦点になっています。
中国は、このところ、アメリカなどからの批判を受け、「中国式統治」や「中国式民主」といった主張を盛んにアピールしています。
中国共産党の指導のもと、定数よりも多い立候補者が出るなど、中国本土とは違う香港の選挙は、そうした主張のひとつのモデルケースなのかもしれません。
ただ、香港の現状を見て、台湾や欧米などが反発を強める中、香港の「一国二制度」は、いったい誰に見せようというものなのか、注目されています。

(石井 一利 解説委員)


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