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アメリカ竜巻災害で気候変動対策は?

髙橋 祐介  解説委員

アメリカで相次いで発生した竜巻災害で、バイデン大統領は、15日、被害がもっとも大きかった南部ケンタッキー州を視察に訪れました。髙橋解説委員とお伝えします。

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Q1)
けさのイラストは、バイデン大統領が重機に乗って復旧支援?
A1)
現地の早期復旧をめざしつつ、被害の大きさから長期間にわたる支援を継続していく考えを示したバイデン大統領。アメリカでは毎年平均1200ほどの竜巻が観測されています。これまでは大気が不安定になりやすい4月から5月頃にかけて起きるケースが多く、いわば“季節外れ”の12月に、こうした巨大な竜巻が発生したのは、異例の事態です。このため、バイデン大統領は、自らの最優先課題として取り組む気候変動問題と竜巻がどこまで関連しているか?EPA=環境保護庁に詳しい調査を指示しています。

Q2)
竜巻と気候変動問題は関連している?
A2)
実はその点がハッキリとしていません。今回は、海面の水温が平年より高いメキシコ湾から暖かく湿った空気が流れ込み、南部や中西部の各地の気温がこの時期としては記録的に高かった上空に、北から強い寒気が流れ込んだ結果、非常に強い上昇気流によって「スーパーセル」と呼ばれる巨大な積乱雲が発生し、広い範囲で竜巻を相次いで引き起こしたと考えられています。専門家の中には、「気候変動が影響した可能性がある」という見方がある一方で、否定的な見方もあり、直接の関連性は、まだ科学的に解明されていないのです。バイデン大統領による気候変動対策も、この竜巻と気候変動の関連をめぐる“論争の渦”に巻き込まれてしまうかも知れません。

Q3)
どうして?
A3)
バイデン政権の気候変動対策を盛り込んだ大規模な歳出法案が、いま議会上院で審議の真最中だからです。この法案に、マコネル院内総務ら共和党は「経済への悪影響」を理由に反対しています。民主党が今回の竜巻災害を機に法案可決を強行しようとすれば、「災害を政治利用した」として、共和党はますます態度を硬化させるでしょう。
被災地の早期復旧をめざす一方で、こうした党派対立を和らげて、気候変動対策を実行に移せるか?バイデン大統領の指導力が試されています。

(髙橋 祐介 解説委員)

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