日本人の人気旅行先の一つである南太平洋の島で、独立の是非を問う住民投票が12日に行われます。
Q.「天国にいちばん近い島」というと?
1960年代にベストセラーとなった森村桂さんの旅行記のタイトルで、映画化もされて人気となったニューカレドニアです。美しい海が広がりサンゴ礁は世界遺産に登録されています。19世紀にナポレオン3世がフランス領と宣言し、フランスの海外領土となっていますが、住民の4割を占める先住民のカナック人を中心に独立運動がたびたび起き、住民投票で将来を決めることになりました。投票は3回までで今回が最後です。
Q.これまで2回の投票はどうだったのですか。
3年前と去年のいずれも独立賛成票は過半数に届きませんでしたが、残留派との差は縮んでいます。3回目の投票は来年10月までとなっていたのが1年近く前倒しされ、独立派が中国の後押しを受けて支持を拡大していることにフランスが危機感を強めたためではないかと言われます。独立派は投票延期を求めてボイコットを呼び掛けており、緊張が高まる可能性もあります。
Q.なぜ中国は独立派を支援するのですか?
1つは資源です。ニューカレドニアは世界有数のニッケル鉱石の産地です。ニッケルはステンレス鋼の他、携帯電話や医療機器のバッテリーなどに使われ、リチウムイオン電池の材料として電気自動車の普及に欠かせない戦略的にも重要な物質です。もう一つの狙いは、太平洋地域での影響力の拡大です。中国は南太平洋の島国に多額の援助を行って次々と外交関係を樹立しています。オーストラリアの東に位置するニューカレドニアを中国側に引き込み、アメリカやオーストラリアなどによる中国包囲網にくさびを打とうとしているとフランスは見ています。フランスとしてもインド太平洋地域の拠点を失えば存在感の低下が避けられず独立を何としてでも阻止したいところです。2度あることは3度あるのか、それとも3度目の正直となるのか、人口28万、四国ほどの大きさの南太平洋の楽園は、米中の覇権争いの狭間で島の将来をめぐって揺れています。
(二村 伸 解説委員)
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