アメリカが主催する初めての「民主主義サミット」が、きょう(9日)から2日間、オンライン形式で開かれます。髙橋解説委員とお伝えします。
Q1)
けさのイラストは、バイデン大統領がテントの前で奇妙な仮面とコスチューム?
A1)
独裁者への抵抗を描いた映画のキャラクターに因んでこんな絵を描いてみました。胸のマークは、去年の大統領選挙で公約した“デモクラシーのD”。「民主主義を守るためには、たゆまぬ戦いが必要だ」とバイデン大統領は開催のねらいを語ります。サミットでは、台頭する権威主義との戦い、汚職対策、人権尊重の3つが主なテーマとなる予定です。
Q2)
参加者の顔ぶれは?
A2)
そこが問題です。招待リストには110の国と地域が名を連ねます。しかし、「専制主義国」とアメリカが位置づける中国やロシアはもちろん、アメリカの同盟国の中でも、たとえばNATOに加盟するトルコやEUにも加盟するハンガリーなどは除外されました。
バイデン政権の高官は「民主主義国によるサミットではなく、多様な代表を招いて民主主義のためのサミットを開くのだ」と説明します。台湾からは、IT担当閣僚のオードリー・タン氏らが参加して、蔡英文総統は出席を見送り、中国を過度に刺激しないよう一定の配慮もうかがわせました。ただ、こうしたサミットが、世界の民主主義が抱える問題の解決にどこまでつながるか?当のアメリカ国内でも疑問だとする声が出ています。
Q3)
どうしてですか?
A3)
招待するかしないかの基準があいまいで、恣意的な印象を拭えないからです。確かに中国による人権侵害は問題です。しかし、明確な基準を示さないまま、ある国は仲間と認め、ある国は排除するやり方は、アメリカの威信を傷つけ、多国間協力を妨げます。中国とは関係を切っても切れない国々の多くは、米中どちらにくみするかを迫られることは望んでいないからです。
サミットは1年後、今度は対面式で再び開かれて、進捗を話しあう予定です。その時、仮面を外した参加者の表情には、当惑の色が浮かんでいるかも知れません。
(髙橋 祐介 解説委員)
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