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変異株の影響は?注目されるアメリカの金融政策

櫻井 玲子  解説委員

新たな変異ウイルス「オミクロン株」が確認されたことを受け、世界経済全体にも影響を及ぼす、アメリカの金融政策に関心が集まっています。
アメリカの中央銀行にあたるFRB・連邦準備制度理事会の最新の動きについて、櫻井解説委員です。

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Q1 FRBのトップ、パウエル議長の次の一手に、世界中が注目しているようですね?

A1 はい。FRBはコロナ対策として続けてきた大規模な金融緩和策を縮小する。
つまり景気のてこ入れ策を徐々にやめていくと、先月、発表したばかりです。
景気が改善し、またそれ以上に、物価が急激に上がっているのがその理由で、直近では「縮小のペースを加速する」選択肢も、検討されてきたんです。
ところが変異ウイルスの出現で、今度は景気減速の心配も出てきたため、逆に、これまでの方針を「軌道修正」するのかも注目されていました。

Q2 FRBはどうするんですか?

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A2 景気減速の心配よりも、物価の上昇を抑えるため、まずは金融緩和の縮小を加速することを優先するようです。
パウエル議長は日本時間の(12月)1日未明に、議会上院で証言し、「雇用や経済活動に下振れリスクがある」とする一方、「変異株の出現で、物流の停滞や人手不足がより深刻になり、物価をさらに押し上げる恐れがある」と強調。
緩和策を、予定より数か月前倒しで終わらせたい考えです。

Q3 変異ウイルスの出現があっても、コロナ対策の縮小を早めてしまうんですね。

A3 それだけ物価の上昇に対する国民の不満が強いんです。
パウエル議長は、来年2月の任期満了を前に、バイデン大統領に再任されたばかりで、こうした国民感情への配慮を示した形です。

Q4 FRBが金融緩和の縮小を早めると世界経済への影響はどうなるんでしょうか?

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A4 特に心配されるのが新興国や途上国への影響です。
変異株の影響で景気回復が遅れるリスクがある上、アメリカの金融緩和の縮小が加速すれば、各国に流れこんでいた投資マネーが一気に減り、「弱り目にたたり目」といった状況になりかねません。
途上国のワクチン接種がすすまなければ、さらなる変異株の出現を招く可能性もあるだけに、途上国への支援にも目を向ける必要がありそうです。
世界経済全体の動きもみながら、パウエル議長がこの難局を乗り切れるか、その手腕が試されています。

(櫻井 玲子 解説委員)

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