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協議再開 イラン核合意の行方は?

出川 展恒  解説委員

崩壊の危機にある「イラン核合意」の再生をめざすイランとアメリカの間接協議が、来週月曜日、オーストリアのウィーンで5か月ぶりに再開します。出川解説委員です。

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Q1:
5か月ぶりの協議なんですね。この間、何か変化があったのですか。

A1:
はい。イランでは6月に大統領選挙があり、国際協調派のロウハニ前政権から反米強硬派のライシ政権に交代し、交渉チームも総入れ替えとなりました。ですから、いわば「仕切り直し」の協議です。イラン側は、引き続き、アメリカ側との直接交渉を拒否していまして、EU・ヨーロッパ連合などが仲介する間接的な協議となります。

Q2:
反米強硬派の政権ですと、これまで以上に合意が難しくなるのでしょうか。

A2:
その通りです。双方の主張の隔たりは、政権交代前よりも広がっています。

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イラン側は、アメリカに対し、トランプ前政権が科したすべての制裁を、一斉に解除するよう求めるとともに、「二度と合意から離脱しない約束」を要求しています。
これに対し、アメリカのバイデン政権は、「到底応じられない」としているうえ、イランによるミサイル開発や武装組織への支援に歯止めをかける項目を新たに合意内容に加えたいと考えています。

Q3:
そうしますと、協議が決裂してしまう可能性もあるでしょうか。

A3:
そのリスクは高まっていると言えます。ただし、イランのライシ大統領も、最高指導者ハメネイ師も、核合意が崩壊する事態は、決して望んでいません。何よりも、原油の輸出を妨げている制裁を解除させるのが、体制存続のための至上命題だからです。

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他方、イランは、制裁への対抗措置として、ウラン濃縮活動を加速させていまして、もし、その気になれば、核兵器レベルの高濃縮ウランの製造も1か月以内に可能になると、専門家は見ています。加えて、イランが、IAEA・国際原子力機関による査察を制限していることも、関係国に懸念を広げています。
このままでは、敵対するイスラエルによる妨害や攻撃のリスクも高まると予想されます。イラン・アメリカ双方の歩み寄りを促し、何らかの合意をつくる仲介努力が求められています。

(出川 展恒 解説委員)


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