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『マグネシウム危機』の教訓

櫻井 玲子  解説委員

クルマや家電に使われるマグネシウムの生産が、世界のトップシェアを占める中国で滞り、各国から、懸念の声があがっています。
その背景と課題について、櫻井解説委員です。

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Q マグネシウムというと普段あまり話題にのぼる資源ではありませんが、「縁の下の力持ち的な存在」なんですね?

A はい、金属の中でも非常に軽いのが特徴で、スマートフォンから飛行機まで、製品の「軽量化」に欠かせない材料として使われています。ところが、世界一の生産量を誇る中国が、燃料不足や、石炭の使用制限を背景に、工場への電力供給を絞り、生産量が大きく減ったんです。
欧米の産業界からは、在庫が足りなくなる、と不安の声もあがっているんですが、日本は、中国からどのくらい輸入していると思いますか?

Q 世界のトップシェアですから、かなり多そうですね?

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A 実は99パーセント、中国から輸入しています。その中国の工場、電力不足が徐々に改善されているのに伴い、稼働率も一時よりは回復していますが、価格は以前の2倍程度と高く、日本でも、影響を心配する声が出ています。
ではいっそ国内で作ればよいのか?といいますと、マグネシウムを作るには大量の電力が必要で、脱炭素化をすすめる観点からはハードルが高そうなんです。
専門家からは「今回の事態が収束しても、中国が脱炭素化をすすめるといって再び生産を減らす可能性がある」という指摘もきかれます。

Q となると、一時的な問題ではすまない、かもしれないですね。

A はい。日本では二酸化炭素をあまり出さずにマグネシウムを作る技術の開発が政府主導ですすめられていますが、すぐに実用化できる段階ではなく、今後も、各国の資源外交や環境対策の影響を受ける可能性があります。
またマグネシウムだけでなく、たとえば燃料電池を作るのに必要なプラチナは、8割を南アフリカから輸入しているといったように、1つの国に大きく依存している資源がほかにもあるんです。

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政府は先週、経済安全保障を強化する初めての閣僚会議を開きましたが、国際情勢の変化や脱炭素化の動きで時代が大きく変わる中、日本の消費者や企業に不可欠な資源の確保をどう考えるか、議論を深めてほしいと思います。

(櫻井 玲子 解説委員)


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