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『袴田事件』再審は?注目の"新展開"

山形 晶  解説委員

55年前、今の静岡市清水区で一家4人が殺害された、いわゆる「袴田事件」で、再審・裁判のやり直しをめぐる動きが新たな展開を迎えています。

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検察官が掲げているのは、被害者の返り血が付いたとされる、事件の証拠物です。
袴田巌さんの服だと認定されたことが有罪の決め手となり、死刑が確定しました。
ところが、この服には疑問が付きまとっています。

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袴田さんが逮捕された1年後に、現場近くのみそ工場のタンクで見つかったものですが、長い間みそ漬けだった割には、血が黒っぽく変色せず、赤いままでした。
袴田さんの弁護団は「発見される直前に第三者がタンクに入れたもので、証拠のねつ造の疑いがある」として再審・裁判のやり直しを求めています。

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この事件は、7年前に地裁で再審が認められましたが、その後、高裁で取り消され、さらに、去年12月、最高裁がそれを覆して、高裁に対して、改めて再審を認めるかどうか審理をやり直すよう命じました。
実は、最高裁も血の色に注目して、ある「宿題」を出していました。
「血液の色が変わる要因を解明せよ」という宿題です。
そこで弁護団は、血液がみそ漬けの状態に置かれるとどうなるのか、専門家を探して鑑定を依頼しました。

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その結果は、血液の赤みのもとになっているヘモグロビンは、みそ漬けだとわずか数日で変性して分解が始まり、赤みが失われていくというものでした。
これが正しければ、「証拠のねつ造の疑いがある」という弁護団の主張の裏づけになります。

最高裁が求めていたのは科学的なメカニズムの解明ですので、弁護団としては回答を示した形です。
今月22日、検察は、来年(2022年)2月末までに反論の書面を出す意向を示しました。
弁護団がいわば決定打になるかもしれない主張を出した状況ですので、検察が説得力のある反論を示せなければ、改めて再審が認められる可能性があります。
検察の対応に注目です。

(山形 晶 解説委員)

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