ロシアでは、コロナの感染拡大が続き、一日の感染者は4万人近く、死者も1000人を超えています。石川一洋解説委員に聞きます。
Q 白衣のプーチン大統領、ワクチン接種を呼び掛けていますが、でも壁が立ちはだかっていますね
★ドクタープーチンの前の厚い40%の壁です。
ロシアは自国製のワクチンをいち早く承認して去年の12月から接種を始めました。
しかし1回でも接種した人の割合は先月末で38%、2回接種は32%です(Our World in Data)。どこの国でも一定程度ワクチンを拒否する人がいて、接種率70%が壁と言われています。
しかしロシアではワクチンに拒否する人は徐々に減ったとはいえいまだに45%もいます(Levada Center)。この厚いワクチン拒否層があるためロシアでは接種率40%が壁となっているのです。
Q なぜワクチンを拒否する人がロシアでは多いのですか
★ロシア特有の運命論や強権的な統治の歴史が影響しているように思います。
ロシアは厳しい自然の中で戦争や革命など大変辛い歴史を経てきました。病気やそれで死ぬのも一つの運命だという考え方も根強くあります。ワクチンに対する偽情報も拡散していて、人工的なワクチンを打つくらいならコロナにかかった方がましだと考える人もいるのです。
Q プーチン大統領の対応は
★プーチン大統領は、ワクチン接種は原則任意という方針を変えていません。それは正論ですが、強権的統治の歴史から、ロシアでは上からの命令を待つ心理は今も強いのです。「必要ならなぜ強制しないのだ、強制でないということはしなくても良いということなのか」と受け止めているロシア国民も多いのです。
またプーチン大統領は欧米との地政学的対立の中にワクチンを位置づけ欧米のワクチンの副反応を強調して、ロシア製の方が優れているとたびたび発言しました。これも逆にワクチン不信を強める一因となっています。
Q 今後どうなりますか?
★深刻な状況の中でさすがにワクチン接種が増加傾向に転じています。ロシア政府も宣伝を強化して40%の壁を突破して、70%を目指したいとしています。ただ不信の払拭は容易なことでないでしょう。
(石川 一洋 解説委員)