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国連大使2人の命運

鴨志田 郷  解説委員

Q、
世界各国の外交官が集まるニューヨークの国連本部で、いま2人の大使の命運に注目が集まっています。鴨志田解説委員に聞きます。国連で激しい「綱引き」が行われているようです。

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A、
懸命に綱を引いているのは、ミャンマーのチョー・モー・トゥン国連大使と、アフガニスタンのイサクザイ国連大使です。国連大使といえば、各国から国連に派遣され国の立場を代表する重要な外交官です。ところがこの2人はいま、それぞれの本国に反旗を翻して熾烈な綱引きを繰り広げているんです。

Q、
ミャンマーでは何が起きているのでしょうか?

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A、
ことし2月にクーデターを起こした軍が今も市民を厳しく弾圧していて、発砲や暴行、拷問によっておよそ1200人が犠牲になっています。クーデター前に任命されたチョー・モー・トゥン大使は、この間一貫して軍の人権侵害を糾弾し、クーデターを認めないよう各国に働きかけてきました。軍は早々とほかの人物を大使に任命しましたが、国内の民主派はいまの大使こそが国の正統な代表だと主張していて、国連で大使交代の手続きは進んでいません。チョー・モー・トゥン大使には多くのミャンマー市民から激励の声が寄せられる一方、大使を狙った暗殺計画も発覚して、身辺の警護も強化されているんです。まさに体を張った外交活動を続けているんです。

Q、
アフガニスタンでも混乱が続いていますよね。

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A、
8月にアメリカ軍が撤退したあと、イスラム主義勢力タリバンが実権を握りましたが、各国はイスラム教を極端に解釈するタリバンが人権を守るかどうかを見極めようとして、暫定政権を承認していません。このためこちらも国連大使の交代の手続きが滞り、前の政権に任命されていたイサクザイ大使が国連に留まり、「女性の権利を認めないような政権は世界から受け入れられない」と、公然とタリバンをけん制してきたんです。

Q、
本国に反旗を翻した2人の大使はこの先どうなるのでしょう?

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A、
国連では来月、9か国からなる信任状委員会が開かれ、誰を国の代表の大使として認めるか、協議が行われます。ただ、この委員会には、人権や民主主義を重んじるアメリカと、各国の主権を尊重し内政に立ち入るべきでないとする中国が、ともに名を連ねていて、こちらでも「綱引き」が起こりそうです。折しもことしは、国連での中国の代表権が北京の共産党政権から台湾の国民党政権に移ってちょうど50年の節目にあたり、中国はことのほか代表権問題にこだわるかもしれません。仮に委員会で意見がまとまらなければ、年末に国連総会で採決が行われ、決着することになっているのです。
ミャンマーとアフガニスタンの国連大使の命運は、混迷を深めている2つの国に国際社会がどう向き合っているかを占う「試金石」ともいえるだけに、この先の国連での議論から目が離せない日々が続きます。

(鴨志田 郷 解説委員)


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