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どうなる核のごみ調査 寿都町長選告示

水野 倫之  解説委員

原発から出る高レベルの放射性廃棄物、いわゆる核のごみの最終処分場に向けた文献調査が続く北海道の寿都町の町長選挙がきょう告示される。水野倫之解説委員の解説。

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小さな町の選挙だが、国が強い関心持っている。結果によっては国のエネルギー政策に大きな影響を与えることになるから。
核のごみは地中深くに10万年閉じ込めて処分することになっているが、
安全性への懸念もあって処分場探しは難航。
そこへ去年、北海道の寿都町と神恵内村が、福島の事故後初めて調査の受け入れを決めた。
現在、両自治体が処分場として適しているのかどうか、
地質に関する文献の調査が行われているところ。

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このうち寿都町で20年ぶりの町長選挙が行われることに。片岡町長が去年、
「核のごみの議論に一石を投じたい」として調査応募に踏み切ったのに対し、
反対する住民や町議会議員だった越前谷氏は、住民投票で決めるべきだと訴えた。
しかしその条例案は議会で通らず、越前谷氏が立候補することに。
今回の選挙は、事実上、「調査の是非を問う初めての機会」という意味。
片岡町長は、「人口減少で町の財政は将来苦しくなる。
調査で国から得られる交付金を活用して雇用を促進し、人口減少に歯止めをかけたい」と話す。これに対し越前谷氏は「賛成反対で生じた町民の分断を解消しなければ
将来の街作りはできない。そのためにも調査は撤回する」と主張。
過去には、反対派が町長選を制し、調査が撤回された例もある。
また神恵内村でも調査は進められているが、
寿都町の選挙結果はその行方にも大きな影響を与えるのは必至とみられるだけに、
処分場にメドをつけたい国としては選挙戦の行方に重大な関心を寄せているわけ。
ただ核のごみは北海道含め全国の原発の運転によってすでに大量に発生しており、
電気を使ってきた国民の多くも無関係ではない。
投票は来週26日、私たちも選挙の行方に注目していきたい。

(水野 倫之 解説委員)


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