ニューヨークの国連総会では、今週、アフガニスタン情勢をめぐって、各国の代表がそれぞれの立場を表明する見通しです。焦点のひとつは、権力を再び握ったイスラム主義勢力「タリバン」が、女性の権利をどこまで認めるかです。
出川解説委員です。
Q1:
タリバンは、女性の権利について、これまでどのように扱っていますか。
A1:
タリバンは、今月7日、暫定政権の閣僚名簿を発表しました。女性の権利向上に取り組んでいた「女性問題省」を事実上廃止し、かつてのタリバン政権が、イスラム法の極端に厳しい解釈に基づいて、女性の行動や服装を監視し処罰した「勧善懲悪省」を復活させたのです。タリバンは、きのう、追加の閣僚も発表しましたが、これまでのところ、女性は1人も含まれていません。内外から懸念や失望の声があがっています。
Q2:
それでも、タリバンは、女性が教育を受ける権利は認めるとしていましたね。
A2:
はい。かつてのように、女性が教育を受けることを全面的に禁止するということはなさそうです。しかしながら、暫定政権は、大学での男女共学は認めず、男女別々に授業を受けさせ、女子学生には、頭髪をスカーフなどで覆い隠すことを義務づけるなど、厳しい制約を設けています。また、先週土曜日から、日本の中学・高校にあたる学校が再開しましたが、対象は男子生徒だけで、女子生徒の登校は、現時点で、まだ認められていません。
Q3:
女性の権利は、かなり制限されていますね。
A3:
はい。ユニセフ・国連児童基金は、「すべての女子が直ちに教育を受けられるようにすべきだ」と、強い懸念を表明しています。アフガニスタンは現在、深刻な食料不足に直面しています。タリバンの指導部は、イスラム法を国内に徹底させるという大原則の一方で、国際社会からの支援を受けるため、ある程度、柔軟な姿勢も示さざるを得ないというジレンマに置かれています。各国とも、タリバンの暫定政権を承認することについては慎重な姿勢です。アフガニスタンの一般市民に、食料などの支援物資をどうやって届けるかが国際社会にとって、差し迫った問題となっています。
(出川 展恒 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら