中国の王毅外相はきょうから韓国を訪問します。関係強化をはかる中国と韓国、その背景と思惑について出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、きょうのイラストは綱引きですね。
A1、対立する中国とアメリカ、その間で揺れ動いているのが韓国です。今回の王毅外相の韓国訪問は、朝鮮半島情勢などについて意見を交わすためということですが、私はそのタイミングに注目しています。
Q2、タイミングですか?
A2、今、日本の近海では、イギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群が、海洋進出の動きを強めている中国を念頭に、自衛隊やアメリカ、オランダ、カナダの海軍と共同で大規模な訓練を行っています。実はこの「クイーン・エリザベス」、横須賀に入港する前に韓国のプサンにも立ち寄る予定だったのですが、直前になって入港が見送られているのです。
Q3、中国を刺激したくないという韓国側の配慮だったのでしょうか。
A3、コロナの感染防止のためとしていますが、中国にかなり気を遣っていることは間違いありません。そんなタイミングでの王毅外相の韓国訪問です。こうした“対中包囲網に加わらないよう韓国に釘を刺しておきたいという思惑があるのではないでしょうか。
Q4、一方の韓国はどうなのでしょうか?
A4、韓国は、安全保障はアメリカに経済は中国に依存しています。どちらともうまくやっていきたいというのが本音だと思います。ただ来年2022年は中国と韓国が国交を正常化してから30年の節目の年で、北京冬季五輪でのムン大統領の中国訪問も検討されています。南北融和を進めるためにも北朝鮮に影響力をもつ中国の協力が必要でしょう。今後、韓国が中国への傾斜を強めていく可能性は十分あると思います。ちょうど今、韓国政府の高官が来日していて、先日新型の巡行ミサイルを発射した北朝鮮について日本やアメリカの代表と協議することになっています。日本としてもこうした機会を捉えて、韓国があまり中国の側に行きすぎてしまわないよう働きかけていくことが必要だと思います。
(出石 直 解説委員)
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