タリバンによる暫定政権が発足したアフガニスタン情勢をめぐり、アメリカや日本、EUの外相らが参加する国際会議が8日開かれ、移動の自由や女性の権利保護などの実現に向けて連携していくことを確認しました。一方、これとは別に中国やパキスタンなどアフガニスタン周辺の国々の外相による会議が同じ日に開かれ、中国の王毅外相は、タリバンの政権樹立や友好関係に積極的なことを歓迎しました。アフガニスタンをとりまく状況について二村解説委員に聞きます。
Q.暫定政権への対応も割れていますね。
国際社会は今こそ一体となって取り組むべきですが、足並みが乱れてはタリバンに対する圧力も弱まってしまいます。暫定政権には、女性やアブドラ氏など前政権幹部は含まれず、首相代行も内相代行も国連制裁の対象となっています。これでは多くの国の承認を得るのは難しそうです。アフガニスタンは干ばつに加えて、戦闘と政権崩壊で援助物資が人々のもとに十分届かず、国連は「3人に1人が飢えに苦しんでおり、9月中にも食料備蓄が底をつく」と警告しています。
また、医療体制も崩壊の危機にあり、多くの病院が閉鎖され国際NGO国境なき医師団などのもとに患者が殺到しています。国境なき医師団は今もアフガニスタンの5か所で活動を続けていますが、栄養不良の子どもが急増していると話しています。
Q.タリバンはこの危機に対応できるでしょうか。
アフガニスタンは国家予算の7割を国際社会の援助に頼ってきましたが、ガニ政権崩壊後中央銀行の資産が凍結され、世界銀行などの支援も止まりました。現地通貨が急落して激しいインフレが起き、経済は混迷の度を深めていますが、タリバンだけで危機に対処するのは不可能です。さらにUNHCR・国連難民高等弁務官事務所は年末までに50万人が難民として国外に流出するおそれがあると警告しており、難民危機の再燃も懸念されています。
Q.国際社会には何が求められているのでしょうか。
国連のグテーレス事務総長は「人道的な大惨事が迫っている」として13日に人道支援について話し合う閣僚級会合を開き、各国に資金の拠出を求めることにしています。援助に必要な資金が4割しか集まっていないためです。アフガニスタンは国民の半数以上が貧困ラインを下回っており、貧困と格差、政治腐敗を一掃しないと再びテロの温床になりかねません。国際社会は政権承認は慎重に、一方でタリバンの協力のもと人道支援は早急にという難しい対応を迫られています。
(二村 伸 解説委員)
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