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相次ぐ3回目接種 広がるワクチン格差

二村 伸  解説委員

新型コロナの感染拡大を受け、ヨーロッパでは3回目のワクチン接種を始める国が相次いでいます。二村解説委員に聞きます。

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Q.日本ではまだ2回目を終えた人は半分以下なのに、もう3回目ですか?

ドイツでは先月3回目の接種を始めたバイエルン州以外のすべての州でおととい、1日から高齢者や重症化リスクの高い人などを対象に3回目の接種が始まりました。フランスも65歳以上の人などに3回目の接種を始め、イギリスも今月中に始める方針です。

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ヨーロッパではワクチンの接種が進み、いったんは新規感染者が大幅に減りましたが、夏以降デルタ株が流行し新規感染者が急増したため、追加接種に踏み切る国がこれからも増えそうです。

Q.ヨーロッパ以外ではどうなのでしょうか?

イスラエルは7月に始めてからすでに国民の2割が3回目の接種をすませ、今週から対象が12歳以上に拡大されました。イスラエル保健当局によれば3回接種した人は2回の接種より感染のリスクが10分の1低下したということです。アメリカは先月免疫力が低下している人を対象に始め、今月20日以降は18歳以上に追加接種を始める方針です。ただ、WHO・世界保健機関は、いま3回目の接種を始めることには反対の立場で、先進国に自制を求めています。

Q.なぜですか?

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世界ではまだ1回目、2回目のワクチンを受けられない人が大勢いるからです。EUは3日前、成人の70%が接種を完了したと発表しましたが、途上国では少なくても1回接種を以上受けた人は1.8%にすぎません。先進国がワクチン確保に走ると途上国に回らずますます格差が広がってしまいます。ワクチンは2回目の接種から半年後には発症予防効果が低下すると言われます。日本も追加接種をいつ始めるか判断を迫られますが、同時に新たな変異ウイルスが生まれないように途上国の接種率を高めるための支援が今こそ日本をはじめ先進各国に求められています。

(二村 伸 解説委員)


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