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混迷アフガニスタン どうなるタリバンの統治

出川 展恒  解説委員

アメリカ軍が撤退を完了したアフガニスタンでは、イスラム武装勢力「タリバン」が、新たな政権発足に向けて準備を進めています。どのような統治になるのかが注目されます。出川解説委員です。

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Q1:
タリバンが新政権を建設中というイラストですね。

A1:
はい。タリバンが、かつてのように、イスラムの教えを極端に厳しく解釈した政治を国民に強制しようとしているのか、それとも、もっと柔軟で寛容な統治を考えているのかが注目されます。

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▼女性の権利をどこまで認めるか。▼旧政権やアメリカ軍に協力した人たちの安全は守られるか。▼法律や制度はどうなるか。そして、▼国際テロ組織アルカイダとの関係を断ち切るか。これらが重要なポイントです。

Q2:
これから、どうなると考えられますか。

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A2:
タリバンの幹部らの発言からは、ある程度、柔軟な姿勢も窺われます。たとえば、「すべての国民の安全を保証する」、「女性の就労や教育を認める」と述べています。しかしながら、現地では、タリバンの戦闘員らが旧政権や外国に協力していた人たちを拘束している、などと伝えられます。女性の権利についても、「イスラムの教えの範囲内で」と条件つきで、どこまで権利を認めるかの判断は、タリバンが握っています。テレビの女性キャスターが職場を追われた、女の子が強制的に結婚させられた、などの事例も伝えられ、国際基準に沿った形で、女性の権利が守られるとは、到底、期待できません。

Q3:
国際社会は、どう対応すればよいですか。

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A3:
タリバンの実際の行動を見極めることが大切です。とくに、「アフガニスタンを再び国際テロの拠点にはさせない」という視点が最も重要です。
そのタリバンは、国際社会の承認を得ようと躍起です。かつて、人権抑圧やアルカイダをかくまって国際的に孤立した反省と、財政的に、外国の支援に頼らざるを得ない事情を抱えているからです。ですから、国際社会は、タリバンの政権を承認し、支援を与える条件として、アルカイダとの関係を完全に断つよう迫ること。そして、基本的人権を守るよう働きかけてゆくことが大切です。

(出川 展恒 解説委員)


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