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審査どうなる?敦賀原発2号機

水野 倫之  解説委員

福井県にある原電・日本原子力発電の敦賀原発2号機の審査が、中断される可能性が出てきた。何が起きているのか、水野倫之解説委員の解説。

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敦賀原発を巡っては、直下に活断層がある可能性を専門家が指摘しており、このままでは廃炉となる可能性がある。
そこで原電は反論のため地質調査を行い、データを提出したが、それが書き換えられていたことが、去年明らかに。
例えば「未固結粘土」と書かれていた部分が「固結粘土」と正反対の意味に上書きされるなど、書き換えは80か所にものぼることがわかった。

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原電は「新たに顕微鏡観察でわかったデータを上書きしたまでで、改ざんの意図はなかった」と説明。
しかし規制委は、重要な断層データの書き換えは審査の信頼性に関わり、その判断も幹部社員が知らない間に行われるなど原電の審査に臨む管理体制に問題があるとして、きょうの委員会で審査を中断するか議論する方針で、その可能性が高まっている。

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中断となると影響が大きく2つあって、まずは原発専業の原電の経営への影響。
原電は敦賀2号と茨城県の東海第二の2基しか所有していない。
東海第二も停止中の中、敦賀2号も審査中断となれば再稼働の行方は一層見通せなくなり、会社の存続に関わる事態も予想される。
もう一つは国のエネルギー政策への影響。
2030年温暖化ガス46%削減に向けて、政府は電源の6割をCO2を出さない電源にする目標を掲げた。敦賀2号機の再稼働もこれに織り込み済みだが、その見通しがたたないとなれば脱炭素の目標にも疑問符がつくことにもなりかねない。

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ただだからと言って審査を急ぐべきとはならない。原発の安全には厳正な審査は不可欠で、今審査の信頼性そのものに疑問符がついているわけなので、規制委はまずは原電の管理体制を厳しく見ていかなければならない。

(水野 倫之 解説委員)


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